9.14「アドレス交換」
あらすじ
「安否確認するから、電話番号とか交換して」紫上会、一致団結。作者は異性どころか友達のメアドをきくのもシミュレーションが必要な9話14節。
砂川を読む
Time
18:30
Stage
紫上会室
……18時回って、今日の相談会は終了とした。
【深幸】
「くぅぅぅ……疲れたあぁぁぁ……」
【笑星】
「だねー……未だ嘗て無い、仕事した気分……!」
紫上会室のリビングエリアにて寛ぐ男性陣。
……確かに、今回ばっかりは仕事を任せてしまったと認めなきゃいけない。何も思わないわけじゃないが、状況が状況、一時休戦的なアレだと無理矢理認識してストレスはやり過ごす。
今は絶望的なほどのヘイトを集めてしまう事態を避けることを考えなくては。
【四粹】
「次週の火曜には、少なくとも全対象者1巡を済ませたいところですね」
【笑星】
「部活とか、それぞれの事情があるからねー。まだ1度も相談できてない人達を優先して並ばせてあげた方がいいかも」
【深幸】
「その辺は俺らが調整できるかもしれねえな。どうだ会長?」
【鞠】
「……判断は委ねます」
【深幸】
「よおぉおおおし7ヶ月分御してやるぜー……!!!」
【信長】
「気合い入ってるな深幸。俺も、会長の期待を裏切らぬよう最高の結果をあげなくては」
別に期待してはしないんだけど……まあ、いいや。
過労死しない程度に張り切ってもらおう。その為にも……。
【鞠】
「副会長、冷蔵庫から各自1本ずつ、栄養ドリンクを配っておいてください。疲労解消と睡眠の質を底上げするやつです。一応紫上会の経費のやつです」
【四粹】
「承知しました。……本日も、会長はお泊まりですか」
【鞠】
「本日の相談会の結果を整理し、明日に備えます」
それに、引き続きルート増築は可能な限りやりますし。
【笑星】
「鞠会長……」
【鞠】
「他全員、帰宅ですね。最終下校時刻近いです、しっしっ」
【深幸】
「その払い方はどうなんだよ。まあ……無理すんなよお前も。疲れてるだろ」
【信長】
「俺も宿泊道具を持ってくればよかったな……」
【鞠】
「仕事無いから無駄です。それよりも、休息を果たしまた滅多に無い仕事に尽くしてくれることを……期待、します」
【信長】
「……ならば、休息もまた大切な仕事ですね。会長とてそれは同じですから、しっかり寝てください」
……分かってるって。
だからその笑いかけやめてって。
【鞠】
「…………」
【四粹】
「……どうか、されましたか?」
【鞠】
「いえ、何でも」
……やっぱり、顔を合わせづらい、か。
書記だけでなく、この場の全員……あの悪夢に登場している。
【深幸】
「信長、そういや今日は両親不在なんだっけか」
【信長】
「ああ、飲み会合宿とやらに出掛けている。今日は寂しく1人で晩ご飯を食べようかなと」
【笑星】
「ダメだよ、絶対料理しちゃダメだからね。外食だよ!」
【深幸】
「ていうかそういうことなら俺んち来いよ。今日カレーって云ってたしどうせ余るから」
【信長】
「それは助かるな! カレーか……! ……カレー……」
【四粹】
「……その、あまり気にされず」
……彼ら全員。
私が殺している――
【鞠】
「ッ……」
【ババ様】
「鞠……?」
【鞠】
「今日も、やりますから」
【ババ様】
「ん……まあそれは構わんが、大丈夫なのか? 現時点で相当疲れてるじゃろ」
【鞠】
「やるしかない」
【ババ様】
「気合い入ってるの」
【四粹】
「……お嬢様」
……副会長がこっそり話し掛けてきた。
執事として。
【四粹】
「本当ならば手前も宿泊しサポートしたいところでしたが……」
【鞠】
「今日は実家の方に帰るんでしょう? 定期清掃でしたっけ」
【四粹】
「はい。それに……汐さんが、赦してくださらないので……」
「男女同じ屋根の下、はいアウトーー!!!」とか叫んでたっけ。何を今更。
【鞠】
「構わず、元々のスケジュールを全うしてください。でも疲れは残さないように」
【四粹】
「……承知しました。命を懸けて」
承知の規模が壮大過ぎる。
【四粹】
「……では、そろそろ参りましょうか」
【深幸】
「だな。会長、寝ろよー」
【信長】
「お先に、失礼します――!」
野郎共はようやっとゴーホームしていく。
……が、3人がリビングから姿を消したところで、雑務が踵を返して私に接近する。
【鞠】
「……?」
【笑星】
「……昨日みたいに倒れられたら、嫌だから」
自身のアルスを、私の眼前に掲げる。
【笑星】
「安否確認するから、電話番号とか交換して」
【鞠】
「は……? 安否確認……?」
【笑星】
「いいから、早く! 先輩たちエレベーター乗っちゃうから。」
【鞠】
「……えー……」
勢いのままに……
雑務とアドレス交換をしてしまった。
【笑星】
「ありがと! ……絶対、無理しちゃダメだからねー!!」
……今度こそ雑務もゴーホームしていった。
【鞠】
「…………」
自分のアルスの、電話帳を開く。
……彼の、データが。もっとオシャレに飾ってるかと思ったけど、シンプルに電話番号とメアドくらいしか情報が載ってない。
【鞠】
「……アドレス交換とか……先輩以来、かも」
【ババ様】
「むふふふふ……良かったのー鞠ー!」
【鞠】
「別に……あくまで緊急用ってことでしょ」
安否確認とか云ってたし。どんだけ信用無いんだ私。
……まあ実際目の前で倒れられてるし、信用無くて当然か。
でもいつ掛かってきたりするんだろう。作業中に内容の無いコールはお願いだから控えてほしいけど。
【鞠】
「はぁ……さて」
取りあえず、晩ご飯の準備、しようかな。
今日は私も、茅園家同様にカレーといこう。