8.51「尺が圧している!」
あらすじ
「なんの!! 俺は紫上会だし、中の上ぐらいの学力はあるよ!!」笑星くん、副将出陣。作者はイントロドンが割と得意な8話51節。
砂川を読む
【司会】
「さあ気持ち切り替えて、副将戦といこうじゃないかあぁあああああああああ!!!」
【観客】
「いええぇええええええええええええええええええええええいいいいい!!!」
【司会】
「現在2対1、稜泉の勝利にリーチが掛かっているのは変わらない! 果たして紫上学園は大将戦へと繋げることができるのか!! 希望はこの子に託された!!」
【笑星】
「村田先輩に続くよ!! そして大将戦に繋げるんだ!!」
【司会】
「紫上会現雑務・堊隹塚笑星いぃいいいいいいいい!!!」
【紫上学園】
「「「おおおぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
【邊見】
「えっちゃーーーーーん、頑張ってーーーー!!」
【夏鳴】
「笑星さん、ファイト、ファイトです……ぅぅ……ファイト、ですぅ(泣)」
【金嶺】
「人見知り且つインドアにはキツい人口密度と熱気に加えてさっきの試合の影響で夏鳴が号泣してる」
【夏鳴】
「冴華さんはきっと幸せに向かうんですぅ(泣)」
【金嶺】
「……取りあえず周りが何事かと心配するので色々拭いてー(←ハンカチ)」
【笑星】
「やってやる……やってやるぞ……ッ!」
【司会】
「対するは、稜泉学園生徒会会計――」
【ハコ会計】
「さて……どうやら生放送の時間どころか後夜祭自体圧してきてるらしいから、終わりにしましょう。タマ副会長の出番も無くしてしまいましょう」
【司会】
「――人呼んで冷徹アツアツおでん海賊王!! ハコ会計はこぉおおおおおおおお!!!!」
【稜泉学園】
「「「海賊王おおぉおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
【深幸】
「何だソレ……冷たいのか熱いのか、どっちかにしろよ……あと海賊王って何だ……?」
【信長】
「しかしこの歓声、ツララ書記さんの時と同等の盛り上がりに感じる。それだけ、彼女も間違いない実力者ということか……」
【石山】
「テレビ映えとか気にせずやったれ海賊王ー!!」
【ハコ会計】
「当然なり。ここで思いっ切りこの海賊王の活躍を映像に残し、部下を大量募集するのです。故に――この将来の海賊王イオリッシュ=ブケショハッド=サンキンコータイの覇海道の、礎になるんだぜーーーー!!!」
【笑星】
「全然緊張してないね、ハコ会計さん……そこはちょっと羨ましい」
でもちょっとこの人のキャラが分からなすぎて全く憧れはしない。
【ハコ会計】
「貴方とてガチガチになっている様子には見えませんが」
【笑星】
「ガチガチだよ、俺の一手に、紫上の勝利が懸かってる状態なんだから」
でも……大丈夫。闘える。
村田先輩がすんごい頑張ってたから。やっぱり凄い先輩達だ、その背中を俺はずっと見てきた。
俺もまた、勝者であるために――!
【笑星】
「さあ臼井先輩、ルールを決めてよ!」
【司会】
「よしきた! じゃあ例の如くクジ引きしちゃうぞーー!!」
臼井先輩が、ボックスの中に手を突っ込んで、紙片を掴み取る――
【司会】
「……と、云いたいところではありますが」
――筈なのに、引っこ抜かれた手には何も無かった。
【司会】
「時間が圧してます!! ってことで、用意した中で一番手早い対決を指定しちゃいます!!」
【ハコ会計】
「ほー?」
【笑星】
「え、何かぞんざい!?」
【司会】
「すなわち、学科問題早押し対決ぅううううううううう!!!!」
大人の人達がせっせと対決舞台を作り上げていく……。
このセットは……クイズ番組、みたいだ。
【司会】
「これから数問、1つずつスクリーンに表示されます。それに対してお手元の早押しボタンを押してから、解答してください。審査員5名中3名が正答と見なしたら、正解1ポイント! 先に3ポイント集めた方の勝利です」
【ハコ会計】
「がっつりクイズ番組なり。しかし、学科問題というなら――進学校である稜泉に部があると云うべきだぜーー!!!」
【稜泉】
「「「ひゃっっはあーーーーーーーー!!!」」」
【ツララ書記】
「いや君らは第二だろ……」
【石山】
「だが海賊王はテストは真面目に受けないが地頭は思いの外いい!! 全然悪くはねえ対決だ」
【笑星】
「なんの!! 俺は紫上会だし、中の上ぐらいの学力はあるよ!!」
【紫上学園】
「「「(微妙……)」」」
……この対決、俺以外の皆なら余裕で勝っちゃってたんだろうけど、俺はそうはいかない。
運で紫上会入りした俺の学力で……果たして、稜泉学園の生徒会の人に勝てるのか。
【笑星】
「ううん……勝つしかない!」
じゃないと……会長に怒られるかもしれないしね!
【司会】
「さあ、第1問!! 文学からあぁああああ!!」
【笑星】
「! よし、比較的得意な方!!」
【ハコ会計】
「奇遇ですね、私もです……!」
――来い!!
【笑星&ハコ会計】
「「…………」」
いや、そういう裏ボスみたいのは来ないで!?
【司会】
「あーーーっと2人同時に固まったぁ!!」
【ハコ会計】
「初めて見ましたこんな字」
【笑星】
「何がどうなってるのアレ、書き順とか全然分かんないよ……!」
【在欄】
「臼井くん、これは無駄に圧すだけだ」
【司会】
「ってことで早々にタイムアーーップ!! ドローです!!」
いきなり引き分けてしまった。
……こんな問題が、続くのかな。ちょっと思ってたのと違う……!
【司会】
「正解はコレ、「たたかいとる」って読みます」
【観客】
「「「分かるかァ!!」」」
【帯刀】
「この読み方は比較的マニアックで、基本的には「クジ引き」の「クジ」がこの字の訓読みなんだ☆」
【ツララ書記】
「漢字そのものがマニアック過ぎる……」
【石山】
「ハコ会計、切り替えていけー!!」
【信長】
「笑星、今のは仕方無い!!」
【ハコ会計&笑星】
「「……!」」
姿勢を再度整える。早押しクイズの最適な姿勢っていうのは全然分かんないけど、兎に角眼力を集中させて、それからすぐボタンが押せるように手にも力を送っておく……。
【司会】
「さあ改めて、2問目だあぁあああ!! 言語!!」
今度は、答える――!
【笑星】
「え、えっと、コレは確か――」
【ハコ会計】
「フッ――」
ぴこんっ。
【笑星】
「ッ――!」
【司会】
「押したのは……ハコ会計さんだあぁあああああああああああ!!!」
しまった、先越された!!
【司会】
「では、解答どうぞ!!」
【ハコ会計】
「糖尿病。持続的な高血糖を示す代謝疾患。インスリンの欠乏および作用阻害を引き起こす。また、ここから数多くの病気を引き起こす恐れがあり、網膜症、ネフローゼ、神経障害が三大合併症」
【司会】
「審査員、どうぞ!!」
【帯刀】
「いいんじゃないかな☆」
【在欄】
「時間が圧している」
【学長】
「気を付けたいものですね」
【司会】
「3人がマル札を上げたーー!! ハコ会計さん正解、1ポイントおぉおおおおお!!!」
【稜泉学園】
「「「はっこちゃあぁああああああああん!!!」」」
【笑星】
「ぐ……意味を思い出せても、解説はできなかった……!」
【ツララ書記】
「君どうしてそんな詳しいんだ……?」
【ハコ会計】
「ほら、私昔の二つ名糖尿病だったので」
【深幸】
「どんな昔を送ってきたんだアイツ……」
【ノウェル】
「糖尿病は中年の相棒ってレベルで可成り浸透してるけど、その理由として一旦なっちゃうと改善がなかなか上手くいかなかったりするんだよねー。だから大事なのは早期糖尿病、「食後高血糖のみ発症」のフェーズでガチで改善に取り組むこと。食事で入ってきた糖質は消化器官を色々回って肝臓に入るんだけど、この肝臓が身体全体の血糖値バランスを保つお仕事しててね、インスリンっていう血糖調節ホルモンが膵臓から分泌されて、入ってきた糖質の3割ぐらいは肝臓が取り込むよう働きかけるの。だけど飲み過ぎ食べ過ぎ運動しなさ過ぎでぶくぶく太って肝臓に中性脂肪が溜まっちゃうと、肝臓さんも運動不足になっちゃうのよね、インスリンの指示無視って糖質がどんどんどんどん血液に流れていっちゃって、はい食後高血糖。おい肝臓働けやと真面目な膵臓さん頑張ってインスリンいっぱい分泌するけど、軈て疲れ果てて一気に分泌機能低下、そしたら血糖値が下がらなくなっちゃって、はい糖尿病。だから、まだ血糖値が下がりやすい食後高血糖だけのフェーズを見極めることが大事なの。朝ご飯抜きからの健康診断で採血とかしてるなら、そのデータを見てみて。空腹時の血糖値126mg/dL未満でもHbA1cが5.8%超え、或いはHbA1cが正常でも空腹時の血糖値が100mg/dLだったら、ちょっと心配した方がいいよ、ブドウ糖負荷試験受けようね。……こんぐらい解説できたらマルあげるー」
【汐】
「私は鞠派なので笑星くん一択でーす」
【司会】
「なお審査員はそれぞれ得意分野や好みというものがありますので、ご注意くださいませー」
【冴華】
「注意しようがないっていうか汐さん審査員失格では……」
【司会】
「つづいて第3問、体育ゥ!!」
【笑星】
「……! よし、これはそれなりにいける気がする――!」
でもどっちかというと実技だよね……あんまり筆記の勉強してない――
――って勉強してないと解けないタイプのやつ来た……!!
【ハコ会計】
「はいぴこんだぜーーー!」
【笑星】
「え、また!?」
【司会】
「ハコ会計さん、GO!!」
【ハコ会計】
「上腕三頭筋、肘を伸ばしたりするのに使われる筋肉。……詳細にとは訊かれてない故、これで充分だぜ」
【司会】
「審査員!!」
【ノウェル】
「いいんじゃない👅?」
【在欄】
「尺が圧している」
【学長】
「大事ですね、上腕三頭筋」
【司会】
「3名の札が上がったあぁああああ!!! ハコ会計さん連続ポイントぉおおおおおおおお!!!!」
し、しまった……また取られた! リーチされちゃった!!
今のは普通に分かんなかった……上腕二頭筋は知ってるのに……名前だけ。
【ツララ書記】
「これも詳しいんだな君……」
【ハコ会計】
「ほら、私昔の二つ名上腕三頭筋だったので」
【深幸】
「糖尿病は!?」
【帯刀】
「その通りではあるが……僕としては、腕の筋トレを行う際上腕二頭筋ばかりに意識が向きがちだけど、筋肉の太さでは上腕三頭筋の方が大きいから、逞しい腕を魅せたい時には同等以上に鍛えるべき部位であることを、言及してほしかったね☆」
【汐】
「私は鞠派なので笑星くん一択でーす」
【司会】
「何にせよハコ会計さん、リーチ!! 追い込まれた堊隹塚くん、追い込まれた紫上学園!!」
【信長】
「野球でいえばツーアウト! そっからが楽しいものさ、気にするな笑星!!」
【笑星】
「う、うん……!」
やっぱり……強い……! キャラは激しくブレてるけど、実力は堅い!
でも……決してワンサイドゲームにはなってない。だって、2ポイントともハコ会計さんが、ギリの判定だったからだ。
俺的にはどっちも完璧な解答だったと思うんだけど……審査員は予想以上に癖が強い。あとあのミスコンに出てた会長の知り合いの人は、俺に味方してくれるらしい。
勿論何一つ油断は赦されない……ただ、諦めず、このボタンを押せば必ずチャンスはある!
【ハコ会計】
「さあ、4問目――これでこの将来の海賊王の勝ちとするんだぜ!」
【笑星】
「ううん、次は――俺が獲る!!」