8.42「5番勝負」
あらすじ
「有り得ない!! 貴方以外に大将など!!」紫上会、バトル漫画的なノリに附き合います。本編は誤魔化しようのないほどにバトルものな8話42節。
砂川を読む
後夜祭が、盛り上がり始めた。
3学校の吹奏楽部が、それぞれの「持ち曲」を披露している。これ、絶対ウチの吹奏楽部しっかり準備できてるよね。陰で練習してたよね。ムカつく。
まあ緊張することなく楽しんでるみたいでよかった。負けず嫌いの経験というべきか、本番に強い人達ばっかである。観客も普通に楽しんでるみたいだし……テレビ映えしてるのかは知らないけど、どうかこのまま平穏に終わってほしいものである。
…………。
……………………。
………………………………………………。
【司会】
「それではお待ちかね、メインイベントと云ってもいいッスペシャルイベントといこう!! 題して「紫上学園バーサス稜泉学園、両生徒会5番勝負」ぅぅぅぅうううううう――!!!!!」
終わってほしかったのに……ッ!!
【鞠】
「生徒会……5番勝負――?」
【石山】
「よっしゃきたあぁあああああ!!!!」
【観客】
「「「おおおぉおおおおおおおおおおおお👏👏👏!!!」」」
【司会】
「ご説明します、甲子園を見ていた方なら分かってますよね、この紫上と稜泉、矢張り見たいのはその激突する姿ッ!!! ということで、今回は野球部ではなく、学園を代表する生徒会の5人と5人で、学園の尊厳をかけて勝負してもらいましょーーーー!!!!」
何勝手に学園の尊厳引っ張り出しちゃってるの!?
【四粹】
「なるほど……紫上会へのサプライズというのは恐らくコレですね……」
【深幸】
「信長はこういうの大好きだよな」
【信長】
「そうだな。今にもあの司会の人と握手を交わしたいぐらいだ。どうせ立案は石山だろうが」
【笑星】
「そういうのは野球部だけでやってー……みたいな顔をしてる鞠会長。どう、正解?」
正解。
【司会】
「5番勝負、先鋒次鋒中堅副将大将、その勝負内容はそれぞれであり、今は伏せられておりまして、開戦時に明かされます。誰を何処に投じるかは自由ですが、重複参加はしないようにしてください。因みに勝負するにあたって、武蔵大学で審査員を用意いたしました!! いでよ――!!」
突然、霧が噴出。
……そして現れた、4人――
【鞠】
「ゲッ――」
【邊見】
「う……」
【冴華】
「え――!?」
【和佳】
「? どうしたの、お姉ちゃん――って、あーーーー!?」
【司会】
「ご紹介しましょう、武蔵大最強の4学生、名付けて武蔵大四天王!!!」
【帯刀】
「やあ、紫上学園、稜泉学園!! また会ったね、麗しいベイビー達☆」
【司会】
「目指せ艶やかパラダイス☆美しきシャインハンター帯刀桃之助ぇえええええ文科三類恋愛文学専攻3年!!」
【ノウェル】
「生放送は、ノウェル流石にドン引きー……👅」
【司会】
「ピョンピョン🐸飛び級のスーパーギャル古川ノウェルぅううううう理科三類特異生物専攻兼四類医学専攻2年!!」
【汐】
「鞠~~冴華ちゃん~~1日ぶりぶり(💩)」
【司会】
「単位足りてるんだからもう卒業しちまえよな正体不明の飛び級留年ガール(?)宮坂汐おぉおおおおおお理科二類機械工学専攻6年!!」
【在欄】
「……………………」
【司会】
「無口を装ってるけど寧ろ誰よりもお喋りで誰も附いていけない廃墟の妖精岐部在欄ッ文科零類廃墟美学専攻4年!!」
【武蔵大】
「「「いえええぇええええええええええええええええええいいいい!!!!」」」
神々しいオーラを漂わせてるっぽいけど、私は結構寒気に襲われてる。
何かもう、色々最悪……。
【司会】
「更に加えて、我らが汀学長を加えたこの5名が勝負内容における審査員を務めます。どうぞよろしく!! では、各生徒会の意気込みを聴いてみましょう。リポーターの菊川さーん」
【リポーター】
「稜泉学園生徒会の皆様です、意気込みをお願いします」
【石山】
「甲子園の時同様に――ぶっ潰す!! 以上!!!」
【稜泉学園】
「「「つぶううぅうううううううううううううす!!!」」」
結局おもてなしとかじゃなくて、ホントに自分が闘いたいだけなんだなあの会長は。
やっぱり昼にでも止めておけばよかったなー……。しくじった私。
【司会】
「続いて、阿部さーん」
【リポーター】
「紫上会の皆様です、意気込みをお願いします!」
【信長】
「石山……こんな最高の舞台をプレゼントしてくれてありがとう。有難く戴くよ――勝利もろともな!!!」
【紫上学園】
「「「ふうううぅううううううううううううう!!!」」」
って何で書記勝手に宣戦布告返してるの!!!
【児玉】
「いいぞ松井いぃいいいいいいい!!! お前たちの力、存分に見せてやれえぇえええええええ!!!」
【野球部】
「松井いぃいいいいいいいいいいい――!!!!」
……ああ、自動で私達、勝つことになってる……。
これつまり、負けたら私、恥曝しにされる……いつもの流れでゲームオーバーってね……。
【司会】
「両者やる気は充分の模様ッ、では5番勝負の出場順を各々決めて下さい!! 作戦タイムでーーーす!!!」
作戦タイムも何も、勝負内容何も明かされてないのにどう戦略を立てろと?
【深幸】
「凄え勢いで負けられない闘いになったな……ま、何であれ勝負事に負けるつもりはねえけど」
【笑星】
「うんうん。ちょっとウチの会長を虐めすぎだからさ、そろそろ石山先輩には痛い目に遭ってもらおうよ!」
【四粹】
「しかし……順番は如何しましょう。現状向こうも彼方も、戦略の立てようがありませんが」
【鞠】
「……企画者側の彼方は知ってるんじゃないですか?」
【信長】
「いえ、それは断じて無いでしょう」
【鞠】
「……何故」
【信長】
「そんなアンフェアなバトルを仕掛ける奴じゃないですからね……ちゃんと正々堂々、敵を叩きのめすことを良しとする奴だ――」
書記、笑う。
闘志剥き出し、牙とか最高に似合いそうな貪欲で殺戮的な笑みだ。ホントだ、スイッチ入ってる。
【信長】
「会長は、大将でよろしくお願いします」
【鞠】
「え……貴方じゃないんですか」
【信長】
「有り得ない!! 貴方以外に大将など!!」
私以外有り得ないってことになった。
はい、私大将になりました。一万歩譲って次鋒あたりがよかったのに……。
【信長】
「仮に石山が来ても、会長なら必ず打ち倒せるでしょう」
過度な期待やめてー……自然災害級嫌がらせー……。
【信長】
「他は……玖珂先輩の云うとおり、どうしようもありません。いっそじゃんけんで決めますか」
【深幸】
「だなー。迷ってたらテレビの視聴者がつまんねえもんな」
【笑星】
「誰が来ても、倒す! そういかなきゃね!!」
順番は決まった。すなわち――
【リポーター】
「紫上側、順番決まった模様です!」
【リポーター】
「稜泉側も順番が決まりました!!」
【司会】
「さあ――激しく火花、散らしてくれよ!! いざ開幕――5番勝負ぅううううううううううううううう――!!!!!」
――最後の山の、開幕だ。