8.33「交代です」
あらすじ
「思想統制は悪しき文化じゃ……」砂川さん、いざ稜泉へ。眼帯したり左眼と喋ったり色んなことになってますが砂川さんは決して厨二病ではないことご理解くださいな8話33節。
砂川を読む
Time
11:30
Stage
紫上会室
私は巡回終了の時刻になったので、一旦紫上会室に戻って来た。
昨日同様、待ち合わせっていうのもあるし。
【深幸】
「玖珂先輩、お疲れっす!」
【四粹】
「お疲れ様で……本当に、疲れてらっしゃいます、ね……?」
【鞠】
「……………………」
どよ~~んとしてるんだろうね、今の私。
稜泉に行くのが寧ろ待ち遠しいくらいだ。兎に角早くこの学園から逃げ出したい。
【鞠】
「貴方どうしてあの莫迦2人を放っておいたんですか……」
【四粹】
「…………僕が顔見知りになった時には、既にあの2人は完成してました」
これだけで何のことか理解しちゃう辺り、彼らとの附き合いの長さを感じる。
監視役に入ったのがこの人で良かったとか今初めて思ったかも。
【深幸】
「本当、大丈夫かお前? あんま無理すんなよ……」
【鞠】
「……貴方こそ、適度に休憩を挟むように。間違ってもあの客たちみたいに酔い燥がないでください」
【深幸】
「しねえよそんなこと。お前が稜泉行ってる間は、俺が紫上学園を護る。……なんて云っても信頼感出ないか」
【鞠】
「……ッ……」
……間近で笑いかけないでほしい。ちょっと、目を逸らす。
私は人の笑顔を見るのがどうやら苦手らしかった。流石私、歪んでる。
【深幸】
「さってと、信長と合流しようかね。そんじゃ玖珂先輩、会長の体調管理含めてよろしく」
【四粹】
「承知しました。命に替えても」
【深幸】
「いや命に替えてまですることじゃないから……」
会計は去って行った。
【鞠】
「…………はぁ……」
【四粹】
「……多少、茅園さんと2人で廻られるということで心配はあったのですが……無用でしたね」
【鞠】
「それはどういう意味ですか……」
【ババ様】
「勿論ソレはラブコメ的な意味じゃろ――」
ポケットに入れておいた眼帯を装着した。
【ババ様】
「鞠ぃ~~~~~(泣)」
【四粹】
「ど、どうかしたんですか……? まさか左眼の容体が……」
【鞠】
「もう治ってます。いや治ってはないか……えっと、まあソレとは別に、私なりの精神安定術の一環といったところで」
何この誤魔化し方。
……ていうかババ様がガチ五月蠅い。色んな容体が悪化しそうなので外してあげる。
【ババ様】
「思想統制は悪しき文化じゃ……」
フリーダムなのは文化ですらなく野蛮でしょ。
【四粹】
「もうよろしいのですか?」
【鞠】
「だいぶ安定しました。じゃ……行きますか」
【四粹】
「お護りいたします。我が全霊をかけて」
【鞠】
「……執事の顔はしないでくださいよ本当」
めちゃ気合いの入った副会長を連れて、私たちも紫上会室を後にした。
……向かうは、私にとっても副会長にとっても良い思い出のないライバル校。
でも正直ソレ以外は何も知らない、ほぼ未知の領域――稜泉学園に、いよいよ乗り込むのだった。