8.02「馴染んできた登校」
あらすじ
「折角共に居るのです。ならば共に、歩いていたいではないですか」砂川さん、普通に登校。だけど1学期と比べてすっかり環境が激変しちゃった8話2節。
砂川を読む
Day
9/11
Time
7:45
【汐】
「では飛ばしますねー」
【鞠】
「この面子で飛ばすんですね」
【和佳】
「とばす?」
【冴華】
「交通法とか抵触しませんよね……?」
【四粹】
「…………」
【汐】
「……分かってますよー冗談ですよーう」
犯罪を冗談で呟かないで。
兎も角、今日も安全運転で我々は登校する。
いつも通りの座席。メイドが運転席。助手席に執事もとい副会長。後部座席に少し狭いが私と姉妹。
……いつも通りって云えるようになるの思いの外早かったなー。私の適応力鍛えられてる?
【和佳】
「えへへ……へへー」
妹の方は窓の先の光景に夢中だ。そのお陰か後部座席の余裕が少しできる。
【和佳】
「車って、やっぱり速いんだねーお姉ちゃん。人が皆止まってるみたい」
【冴華】
「そうね。和佳はまだ経験無いけど、高速道路に乗るともっと速いです。今の2倍は出ますよ」
【和佳】
「凄いんだね、車ー」
【汐】
「戦闘機とか、もっともっとスピード出るんですよー。今度試しに乗ってみましょうか」
【和佳】
「わーい!」
【冴華】
「待って、何で和佳が戦闘機に乗らなきゃいけないんですか、却下です却下!」
【四粹】
「……戦闘機の運転免許までお持ちなのですか……?」
【汐】
「いやありませんけど。抑も戦闘機自体このご時世禁止されてますし」
【冴華】
「なら何故提案した……」
車内は朝から賑やかだ。私はその環境はあんまり好きじゃないけど、総合的に考えて今の登校は純然と嫌なわけでもなかった。
別にこの連中と一緒に居るのがいいとかそんな大規模な心変わりをしてるわけでなく、メイドが暴走運転を控えるからである。
【和佳】
「今日も、良い天気だなー……えへへ……」
この子の存在価値が思いの外大きいのだった。
Stage
霧草区
さて、いつもの場所に到着。
此処からは歩き。前は私独りだったけど……これからはそんな時間は無いだろう。
【汐】
「いってらっしゃーい。……ひゃっはあああぁああああ!!!」
【冴華】
「発進と同時にドリフトってできるものなのね……」
【和佳】
「お姉ちゃん、行こー」
【四粹】
「お嬢様、参りましょう」
【鞠】
「……そろそろ会長の方に戻してください」
【四粹】
「承知しました――会長」
霧草の大通りを、4人で歩いて行く。
これが朝の日常になっていくのだろう。これについてはまだ慣れてないっぽい。だって、
【周り】
「「「……………………」」」
何か……周りの目が、ね?
Stage
紫上学園 外
学園に着くと、もっとその違和感というか、眼差しが身近になる。
【和佳】
「お姉ちゃん、和佳、行くね!」
【冴華】
「ええ。今日も良い子で頑張るんですよ」
【和佳】
「はーーい!」
あの子は元気にC等部の校舎の方へ駆けていく。それを見る限り……学園では上手くやっていると見てよかろう。
なんて他人の分析してる暇はまだ私にはないのだけどね。ほら、また囁かれてるー。
【学生】
「今日も四粹様、会長と登校されてるわね……登校時間とか被ってるのかしら? 羨ましい……」
【学生】
「加えて村田も一緒なの最近多くね? 俺の記憶が間違いないなら村田と砂川って相当仲悪いよな……」
【学生】
「ていうか村田が滅茶苦茶莫迦にしてたよな……アイツの性格上、気に入らない奴と一緒に登校するとは思えないんだが……」
【学生】
「いつまで経っても見慣れない3ショットだなぁ……」
繊細な私の耳に全部入ってくるぅぅぅ……。
【冴華】
「……今更ですが、私たち一緒に登校で良いんですか……?」
【鞠】
「一応云っておきますが私は独りで歩きたい派です。しかし――」
【四粹】
「折角共に居るのです。ならば共に、歩いていたいではないですか(←キラキラ)」
【鞠】
「――この人がコレなので」
【冴華】
「無下にはしないのですね……」
この副会長の内側の豹変ぶり、どう処理したもんかな。私もまだ手探り段階である。
【鞠】
「この人と一緒に歩いてたらあらぬ噂発生しそうなので、貴方も道連れです」
【冴華】
「それは構いませんが……学園生からしたら私が貴方と一緒に居るのも最高に混乱要素では……」
【鞠】
「そのまま混乱してればいいと思います」
私たちの関係を一般の連中が知るよしもないのだから。
……ってか知られたら私の命が危ないっ。