6.05「先輩の正体」
あらすじ
「紫上会さんとなれば……話は別、だわな」紫上会、謎の男に危機的状況。そして本編御存知の方は「うわぁ、遂に出てきたよ」ってなる6話5節。
砂川を読む
【鞠】
「――何やってんですか、先輩」
すぐそこの路地では、なんかもう、頭痛くなってくる光景が広がっていた。
【笑星】
「え……うわ、鞠会長っ!!? 何でここに!?」
それ完全にこっちの台詞だと思うけど。
あーもう……最悪だよ……。
【先輩】
「あれ……何で砂川が。ベンチに座ってたろ」
【鞠】
「ですね。先輩がいきなりあんな中途半端な場所で1人でトイレ行くとか云うから、丁度良いしこの不審者たちを蹴散らしておこうと思ったら……」
【先輩】
「同じこと考えてたわけだ」
変なシンクロを起こしてしまった。道理で不自然なお手洗いだと思った。
できれば先輩に見つかる前に、且つ先輩に勘付かれないよう、追っ払いたかったのだけど……流石に無理があったか。実に残念。
【四粹】
「……会長も、最初から我々に気付いていたのですね」
【深幸】
「ま……マジかよ……」
【先輩】
「へえ、それは気付かなかった。まあ砂川、繊細だからなぁ……ていうか普段モブ過ぎて見られてなかったから、視線浴びるの慣れてないっていうか過剰反応するんだろうなぁ」
【鞠】
「変なとこ分析しないでください先輩」
多分そういうことで合ってるんだろうけど。一見便利スキルだが、常時発動してるようなものなので正直疲れる……。
【先輩】
「で……こいつらはお前のお仲間ってわけだ」
【鞠】
「はぁ~~……」
ああもう……そういう表現をしてくる。だから、見つかりたくなかったのだ。
【鞠】
「解釈はご自由に。どういう立場の人達なのかは先輩の予想通りかと」
【先輩】
「紫上学園の住民の生殺与奪を握る5人の権力者……紫上会の4人ってことか。全くのアポなしなのに、これは予想外の対面だねぇ」
【信長】
「生殺与奪って……色々大袈裟な認識だな……」
【先輩】
「違うか? 理事会に匹敵する権力を持ち、逆らう者もまた自由に処罰を下せる。校則だって論理上だけなら変え放題。おまけに非民主的な選抜方法ゆえに、クーデターにも強い。一般的な生徒会組織に比べれば、遙かに強力な支配力を有する組織じゃないか」
【信長】
「……ねじ曲がった解釈をしているが……それにしても詳し過ぎる……紫上学園でもない者がそこまで学園内事情を把握してるなんて……」
【深幸】
「一体、アンタは……」
【笑星】
「ていうか……鞠会長、さっきからこの人のこと、先輩って……」
……しまったな。そこは確かに油断してた。
おまけに先輩は、隠す気もないようだし……。
【信長】
「……先輩……ッ――!?」
【深幸】
「まさか……ソレって――」
【先輩】
「紫上会さんとなれば……話は別、だわな」
注目が集まる中。
先輩は今日会ってからずっと深々と被っていた帽子を、躊躇いの意識も無く取って。
【先輩】
「ま、既にお察しの通りだ」
正体を晒した。
【先輩】
「真理学園3年――井澤謙一。すなわち、そこの会長さんの元先輩だ。よろしく」