6.30「魅力的な女性」
あらすじ
「グッッッッハアアァアッッ!!?」紫上会、偽造カップル作戦進行中。しかし最高にグダグダに崩されまくって砂川さんピンチな6話30節。
砂川を読む
地獄の懇談はまだまだ続く。
【四粹】
「そして会長は先の報告にもあったような活動を、我々の誰よりもこなし、紫上学園の生活と、紫上学園の中央大陸における社会的価値を確実に築き上げているのです。体育祭での外部客数は歴年最高です」
副会長、次々と私の魅力の証となる実績を流麗に喋る。
流石に独りで全部やっちゃってるとは云わない。実に絶妙な説明だ。
【石山】
「体育祭……あーあの写真の数々ね」
しかし体育祭は余計だッ、一体何度私は御輿でダメージを受けなきゃいけないの!!
【笑星】
「もっかい見るー?(←アルス)」
見せるなッ!!!
【石山】
「砂川会長は凄い人気だなぁ、俺もこんぐらい人気が欲しい――ん?」
【タマ副会長】
「会長だって相当人気じゃないですか――え?」
……ん?
【ハコ会計】
「ほや」
【ツララ書記】
「……おっと……?」
雑務のアルバムアプリで私の痴態を眺めてた稜泉の連中が、何か止まった。
【ココア雑務】
「あの……四粹、様……?」
【四粹】
「ど、どうかされましたか?」
【ココア雑務】
「こ、この写真……四粹様じゃない人と会長さんが……」
【ハコ会計】
「御姫様だっこしてます」
【深幸&鞠】
「「!?!?!?」」
ぎゃあぁあああああもっとヤバい痴態あったあぁああああ……!!!
【苺花】
「え、えええ!?!?」
【涙慧】
「というか、これ、チャラ先輩……」
【ココア雑務】
「ど、どどどどどどどういうことですのーー!?」
【石山】
「ココア、キャラがブレブレ」
【深幸】
「違う! こ、これはアレだ!! 玖珂先輩とは違うチームだったし俺と会長同じチームだったし、ホント色々あって何だかんだでペアで出ることになっちまってなーあはは!!」
貴方が無理矢理誘ってきたんでしょうが。
……何て指摘は喉で食い止めて、頷いておく。大丈夫、この件は他の面々も理解しているからフォローは容易い筈――
【深幸】
「だよな信長!!」
【信長】
「……同じチームなのをいいことに、玖珂先輩の女と肩を組むのは感心しないな……」
【笑星】
「だねー……それどころか御姫様抱っこだもんね、陰で非難ボーボーだったよね……」
【深幸】
「(えぇええええええお前ら何でえぇえええ!? 何で味方してくれないのおぉおおお!?)」
――何か、思ってたより超リアルな口裏合わせでこの危機は乗り越えた。会計が悪者化したけど。
【四粹】
「……と、こちらの話ばかり続けてしまいました。どうでしょう、次は真理学園の話でも――」
【タマ副会長】
「そうそう、私も興味あります、真理学園――」
ここらで副会長コンビが話題シフト作戦、リベンジに出る。
云ってることは間違いないし実際こちらが優勢な筈だが――
【ココア雑務&亜弥】
「「いえまだ」」
という意見が強固過ぎてまだ逃げられない。
どんだけこの人達、私の汚点を探したいんだろう。あと亜弥ちゃん!! 何で亜弥ちゃんがそっち側なの!!
【石山】
「……そういや、ずっと気になってたことあったんだけどさ信長」
【信長】
「ん?」
と、ここで前傾姿勢ではなかった稜泉の会長が話題を飛ばしてきた。
【石山】
「そっちの野球部って抑も甲子園エントリーできなかったんじゃないの?」
【信長&鞠】
「「……!?」」
何でそれを。
【石山】
「いや対戦してから気になったんで調べてみたら、結構騒ぎになってたっぽいからさ。誓約書……? 部活動するのに必要な手続き踏んでなかったから今年度は部活じゃない~、的な。俺よく分かんなかったんだけどさ」
【鞠】
「(マスコミか……)」
ある程度情報の出回り具合は調べておいたんだけど……私の調べに漏れがあったっぽい。
まあ、完全に黙秘するような約束はしてなかったし、取りあえずあの赤羽ご乱心の会見映像は彼的にも私的にも紫上学園的にもヤバいので報道自粛の重圧を色んな方面からお願いしておいた。そこさえ漏れてなければ私としては取りあえずOKだ。
【信長】
「ああ……確かに本来、今年は諦めるしか無かったんだけどな……会長が、助けてくれて」
【鞠】
「……仕返しただけですが」
【信長】
「そう、ですね。だけど……それで俺は道を貰った。沢山のものを、戴いた……」
【深幸&笑星】
「「…………」」
【信長】
「会長は――生涯の、恩人です」
まだ学生の癖に表現が大袈裟。
あとその誤解を招きかねない純粋な笑顔やめて!! 全体の文脈忘れるなこの書記ぃ!!
【深幸】
「(……信長……もしかし、て――)」
【石山】
「なるほどー、じゃあ俺も感謝しておかないとな。あんがと砂川さん、信長甲子園に行かせてくれて」
【鞠】
「……受け取る、理由の無い言葉、です……彼は、自分で勝手に甲子園に行って、貴方と戦ったというだけ……そこに私は含まれません……」
【石山】
「ファウルボール顔面に喰らったのに?」
コイツキライ。
【信長】
「会長の叱咤激励があったから、あそこまで足掻けたんだよな……」
【石山】
「ほんっと、お前甲子園の怪物そのものだったもんなー! ははは! その力は会長あってこそか!! 何か、いいなそれ」
【信長】
「ん、そうか……?」
【石山】
「んー……俗に何か云うよな、そういうの……――あっ、そうだ、愛の力ってやつ!!」
【信長&深幸&笑星】
「「「愛の力ァ!?」」」
もう黙ってェこの莫迦!!!
【女子】
「「「……………………」」」
ああ……怪訝とかそういうのじゃない、もう恐怖してるんじゃないかな、女性陣。
だって私についての情報、こんな感じだもん。
- ・副会長をゲットしてる
- ・会計と肩を組んだり御姫様抱っこされたりしてる
- ・書記×私⇒愛の力
私ヤベえ奴じゃん……。
【笑星】
「松井先輩も、人のこと云えないくらい、会長と仲良いよね~……」
【信長】
「笑星!?」
そして雑務!! 貴方フォローする気ある!?
【石山】
「おっと笑星くん? もしかしてヤキモチってやつ~?」
【笑星】
「え゙っ!?」
【タマ副会長】
「か、会長! 趣味が悪いですよ……! 砂川会長には、玖珂先輩という人が居らっしゃるんですから! というか……そういう感じの話題、会長できるんですね……私、初めて知りました……」
【石山】
「ん? ああ、別に得意とかじゃねーよ。ただまあ、愛とか恋とか、そんなワード使う機会とか無いじゃん? 俺も英も」
【タマ副会長】
「…………そうですね……無いですね……」
【ツララ書記】
「(コイッツ……ッッ)」
【笑星】
「い、いや、別にヤキモチとかじゃ……ま、鞠会長の彼氏は……その、玖珂、先輩、なん、だし」
やっと味方ワード使ったけど、何でそんな区切ってるの? 貴方は媚薬飲んでないでしょ?
【石山】
「……ん? いや、でもだからってヤキモチ焼かない理由にはならなくね? ほら、周りの男子見てみ? あと女子も」
【笑星&鞠】
「「え?」」
【石山】
「グループワークという名の昼食をとりながらも、皆、砂川会長を見てる。双眼鏡も肌身離さずだし。女子の場合は会長それから玖珂副会長かな?」
【男子】
「「「(ギクッ///)」」」
【女子】
「「「(ジーーー///)」」」
【石山】
「お互い仕事もできて、オーラも異性からすればめちゃんこ魅力的。そんな2人に対してさ、付き合ってるー……なんて理由じゃ、ヤキモチ止められなくね?」
【紫上会】
「「「!?!?!?」」」
圧倒的正論、紫上会に絶大なダメージ!!
それを是非うちの顧問に教えてあげてほしい……ッ!
【笑星】
「そ……そうだよね……! 何か、妬いちゃうよね、仕方無いよね!!」
だから味方ちゃんとやって!!
まずい……これは押されてる……何とか、この話題を終了させないと、もっとボロが出る……!!
何とか、何とか打開策を――
【タマ副会長】
「ちょ、ちょちょちょ、ちょっと待ってください会長!?」
【石山】
「ん?」
【タマ副会長】
「そそそれって、会長も、その……砂川会長の、こと……?」
【石山】
「こと?」
【タマ副会長】
「いや、その……だから。み……魅力的~って、思ってる……感じ、ですか――?」
【石山】
「え、そりゃだって非の付け所無いしなぁ」
【タマ副会長】
「グッ」
【石山】
「美人。それプラス妖艶。それプラス良い人。更にプラス超絶仕事できる人」
【タマ副会長】
「グッ」
【石山】
「ついでにプラスでナチュラルに学力完璧」
【タマ副会長】
「グゥウッ」
【石山】
「こんな完璧な女性さ、逆に見るなって云う方が無理じゃね?」
【タマ副会長】
「グッッッッハアアァアッッ!!?」
【周り】
「「「!?!?!?」」」
副会長殿、吐血――!!!
【ツララ書記】
「は、英くぅううううんん!! この莫迦野郎、何てことをッ!!」
【石山】
「ツララ書記、素が出てる」
【ココア雑務】
「ちょっっっっとは乙女心理解してくださいよー!! 恋愛ゲームのタチの悪い主人公ですかこの、バ会長ー!!」
【石山】
「主人公? 何が?」
恐ろしい事件が発生した。
端っこの方で同じように交流を深めてたっぽい顧問陣も、こちらの混沌とした騒ぎに気付いて駆けつけてくる。
【ココア雑務】
「堀江先生! 大変!!」
【堀江】
「どうしたの!? 何があったの!?」
【タマ副会長】
「…………(ぴくぴく)」
【ハコ会計】
「いつものなり。我らが愚かなタマ副会長がバカヒロ会長の心ない言葉で」
【堀江】
「あー……いつものね……まあ石山くんだから仕方無いわよねー……」
【石山】
「仕方無い?」
ほんっっっっっっっっともう黙っててお願いほんと。
【笑星】
「と、取りあえずどっかで休ませた方がいいよね。お医者さんとか居るかな――?」
【苺花】
「あ、それなら私たちの顧問の美千村先生が――」
【杏子】
「…………(ぴくぴく)」
遠くの方で女医は痙攣してぶっ倒れてた。軽く血溜まりできてる。
【亜弥】
「先生!? どうしたんですか先生!?」
【秭按】
「……こちらもよく分かってないのだけれど、さっきからずっとラブコメの波動が殺虫剤の要領で私の息の根を止めてくる、とか何とか」
【苺花】
「いつものだ……」
【涙慧】
「ある条件下でアラフォーに突入することで発症する病気もとい一発芸――まさか、先生の他にも使える人が居るとはッ……」
【ツララ書記】
「うちの副会長は全然アラフォーじゃないのだが……」
【石山】
「おーい英ー? しっかりしろ英ー?」
【タマ副会長】
「…………(ぴくぴく)」
……えらいことになった。けど、稜泉の副会長と美千村先生が身体を張ったお陰で、この時間を有耶無耶にすることができたのだった……。
【鞠】
「……………………」
ああ、気力が見事に死に尽きている……ならばせめて、性欲的なモノもお願いだから一緒に沈んでいってほしい……。
【鞠】
「(助けて先輩ぃぃ……)」
いやでも先輩にこんな私見られたくないぃぃぃ……。