6.15「波乱の予感」
あらすじ
「……先輩が云ってたのは、こういうことだったんだ」紫上会、ミマ島を歩きます。島の風景描写はあんまりしない予定な6話15節。
砂川を読む
Stage
ミマ町村部
【ババ様】
「気を付けてなー。役所は3階建ての小汚い白い建物じゃぞー」
【鞠】
「…………」
ババ様に見送られて、再び私は外に出た。
色々ツッコみたいことはあるんだけど、次のスケジュールが迫っている。歩かなくては。
目指すは、初日懇談会の……というか大半のスケジュールの開催場所である町役所。合宿の本番は2日目なので、既にお疲れ気味の今日はお互い挨拶を済ませて顔見知りになろう程度に留める。
距離は紫上学園のお宿から歩いて20分程度。近いような遠いような、微妙な感じだが町の規模でいうと遠いに値するとババ様は云っていた。
ってことで暫く歩いてるんだが、暇な口は自然と気になる話題を飛ばす。
【笑星】
「……真理学園、来たんだね」
【深幸】
「ああ……」
そう……ババ様へのツッコミを怠った理由の大半は、もっと気になってるソレがあったからだ。
この合宿に――あの学園が参加している。
それは私は勿論のこと、他の皆にとっても無視しがたい展開だ。
【四粹】
「……少なくとも、去年や一昨年の合宿には参加していなかった筈です」
【信長】
「毎年殆ど常連で固まってるし……多分、初参加じゃないかと」
【四粹】
「それに……調べが完全ではありませんが、真理学園が別の大陸の別の学園と、共同作業をするというのは、聴いたことがありません」
【深幸】
「その辺、どうなんだ会長? 俺たちよりは知ってるだろ、その辺の事情」
【鞠】
「そんなものに特に興味関心はありませんでした」
【深幸】
「元学園生としてそれはどうなんだ……」
だって本当に興味無かったもん。
しかし先輩と関わっているうちに、否が応な流れで真理学園の歴史は身に着いてしまった。それも「正史」よりも正確に。
その認識で考えると……まあ結局無知な周りと大して変わらない印象に落ち着く。あの閉鎖的な学園が、わざわざこんな発展途上の規格に何で飛び入り参加してるんだ。
ていうか、何で参加が赦されてるんだ。私の転入で一回学園が荒れた経験から考えて、まず普通断られるだろう。あんな世間から大変忌避されている場所の学園が参加してしまっては、他の参加学園の思い出作りに支障を来すのは予想に難くなかった筈。
…………ただ。
* * * * * *
【鞠】
「……先輩、時間です」
【謙一】
「あ、本当だ。……じゃあ、元気でな。眼、ホント無理すんなよ」
【鞠】
「先輩こそ、胃薬飲みすぎないでくださいね」
【謙一】
「そうそう、それと……亜弥のこと、よろしくな」
【鞠】
「はい? ……はい」
* * * * * *
【鞠】
「……先輩が云ってたのは、こういうことだったんだ」
あの時の、最後の言葉。「亜弥のことを、よろしくな」。
漠然と、これからも妹と良い附き合いをしてくれ的なものだとあの時は解釈していたけど……実際はもっと、狭義的だった。このイベントを指していたんだ。
* * * * * *
【鞠】
「生徒会って……あんまり聞き慣れない概念なんですけど」
【謙一】
「― でも一応ウチにもあるぞ、生徒会 ―」
【鞠】
「……えっ!? あったんですか!?」
【謙一】
「― 俺らが出しゃばる所為で活躍すること全然無いんだけどな。因みに俺の妹、1年だけど生徒会長やってるぜ。お揃いだな ―」
【鞠】
「知らなかった……あったんだ、そんなの……」
* * * * * *
そういえば確かに、妹さんが生徒会長やってるって云ってたような……。まさかそれを確かめる機会が来てしまうだなんて。
兎も角、私が紫上学園で受けてきたような仕打ちに……下手すれば彼女が遭うかもしれないから、ソレを防いでくれって意味だったんだ。
いや……普通にちゃんと云って??
【鞠】
「はぁ~……先輩、相変わらず鬼畜……」
結局、今回も凄く疲れそうじゃん……。