6.13「生徒会集合」
あらすじ
「今回は、18校の学園が集まりました」紫上会、合宿に臨みます。もっぱら都会人な作者は何とな~く島に憧れます、そんな6話13節。
砂川を読む
Time
12:45
Stage
ミマ町村部 中央公園
町村部という区分に入った。
村みたいなのをイメージしてたんだけど、藁葺き小屋とか。全然そんなことはなくて、普通にコンクリートで鋪装された道や建物が並んでいた。しかし見た限り、自動車のような強力な移動手段は見当たらない。多分自転車さえあれば町を回るには充分なんだろう。
そんな、程よい狭さを感じながら……目的地に辿り着いた。
【秭按】
「……ここね……」
視界の騒がしさのないところが個人的に高評価だったけど、町村部の中に存在する中央公園なる場所は、ちょっと違った。
島っぽさが出てるっていうか……何この鳥居みたいなの。
多少気になりながら、林と石の道を歩いて抜けると……像が目に映った。
【笑星】
「何か凄い像が建ってる! うわ、デカっ!!」
何十mあるのか分からない巨大な像。異文化を感じざるをえないオブジェクトが中央に置かれて、広場は広がっていた。ラジオ体操をするにも、集会を開くにも、此処はうってつけと云えるだろう。あのオブジェクト邪魔だけど、此処が町の中心地なんだっていう主張は強く伝わってくる。
【秭按】
「このミマ島のヌシ――ミマキの石像ね。調べた限りだと、この島には50以上のミマキの石像が建ってるらしいわ」
【深幸】
「50以上もあんのかよ!?」
【秭按】
「流石に、この3階建てサイズのものは他に無いと思うけど」
【笑星】
「へぇ~……こういうの見ると、何か本当遠くに来たって感じがするなぁ!」
祭られた存在、ということか。
となればその偶像は何かしら生き物の容貌を持つ筈だけど、正直アレが何を象ってるのかは今イチ分かってこない。4足で立ち、翼が4枚あって取りあえずヒトではないよねコレ。
実際あんなのが等身大サイズで襲いかかってきたら人類はひとたまりもなさそうだ。……居ないよね?
【大人】
「ではー、そろそろー、開会式を、始めてみようかなー」
【秭按】
「殆ど時間通りに着いたみたいね。どう並ぶかは、聞いてるのかしら」
【鞠】
「特に並び方は無いそうです。顧問は後方にまとまるとのことです」
【秭按】
「分かりました。では、ご武運を」
先生、堅い。休めてない。
……で、大掛かりなイベントの割には事前情報少なすぎな打ち合わせを思い出しながら、勇気をもってテキトウに前に行く。もはや一列ですらない。
だけどそんな整頓してない状態を良しとして、髭が半端ないおじさんが壇上に立ち開会の言葉を連ねる。
【町長】
「今日はこんな、クソ遠いところにまで集まってきてくださり、大変お疲れさまでしたー。私、このミマ町村部の町長をしております、町長と申しますー」
まぁ気さくなんだろうなって思った。ただ確か打ち合わせによれば、まず主催担当の人のお言葉があった筈なんだけど。早速ガバガバなんだけど。
【町長】
「町長からは、この島についてを説明しようかなと思いますー。中には、事前に調べてくれた人もいるかもねー、そう、このミマ島で最も大事にされているのは、コレですー」
町長、両手を上げる。多分真後ろの巨大な像を指している。
【町長】
「ミマ島には、守りヌシが宿っていますー。ここに限らず、グレイシャの島々にはそれぞれ、ヌシが存在すると伝承は語りますー。これを説明しだすと3日かかるのでー、割愛しまくりますー。大事なのは、それぞれのヌシ様は、それぞれ何かを司っている、ということですー」
【笑星】
「おお……神話だー」
【町長】
「そしてこのミマ島のヌシ様――ミマキ様は、縁結びを司っているのですー。恋する少年少女の、味方なんですよー」
【笑星&深幸】
「「ほう」」
【信長】
「どうした?」
【町長】
「こうして、ミマ島に出会いました少年少女の行く先が、僥倖へと結ばれますことをー」
パッとしない町長のパッとしない話が終わった。
そして今度こそ主催担当の大人の出番である。
【主催】
「平保31年度、全國A等部学校生徒会懇親合宿を、開催します――!」
【生徒会】
「「「ひええぇええええええああぁああああああああ!!!」」」
拍手と奇声が舞う。
生徒会だというならもっと気品を心懸けてほしいものだ。いや、拍手すらせず欠伸してる私が云うのもなんだけどね。
それから主催の、開催に至るまでの苦労話や合宿の歴史とかが語り出される。まあそれっぽいけど有価値なものは少なく、特に主催の家族の話とか一切要らないなって思った。だけどペットのラミエルちゃん(←犬)が子ども産んだエピソードは正直ほのぼのした。お陰でそれまでの話ほぼほぼ忘れてしまった。
【主催】
「このあとのスケジュールですが、まずは各宿泊先に荷物を置いていただきます」
勿論この辺はしっかり打ち合わせで聞いている。一番大事と云ってもいい、宿泊についてだ。
イメージ通り、この島にはホテルなんていう施設は存在しない。集合住宅なんてものは幾つかあるみたいだけど。
まあそんなわけで旅館とかじゃなくそこそこ大きい民家に2日間寝泊まりさせてもらおうということになる。人見知りな私は正直この部分に一番の山場を感じていた。
なお、どんな民家に泊まるかは主催の方々が勝手にクジ引きで決めたらしく、なんと紫上学園は自分で引いたわけでもないのにいつの間にか「大凶」を引いたらしかった。それ民家に失礼じゃね?
どんなところなのかはまだ訊いてない。「自分の眼で確かめろ」と中途半端なガイドブックに書いてそうな丸投げ方式だ。
家主と相性が悪そうだったら、私は野宿する覚悟でいる。
【主催】
「私からは以上となりますが……一旦解散する前に、最後にこの場に集まった皆さん――学園を私の口で紹介させていただきます。今回は、18校の学園が集まりました」
【深幸】
「多いのか少ないのか分からねーな」
【信長】
「去年も同じくらいだった気がするが……」
【笑星】
「知ってる学校とか、あるかなー」
……そういえば打ち合わせに応じた私も、その辺はまだ知らない。
【主催】
「じゃあ、まずは大輪大陸から参加した学園を、ご紹介します。自分の学校名を呼ばれたメンバーは、一時起立をお願いします。下呂沼学園!」
【下呂沼学園】
「はい!」
【他】
「「「(拍手)」」」
【主催】
「横戸橋学園!」
【横戸橋学園】
「よろしくー!」
【他】
「「「(拍手)」」」
【主催】
「兎舎河原学園!」
【兎舎河原学園】
「どうもー」
【他】
「「「(拍手)」」」
【主催】
「稜泉学園!」
【女子】
「は、はい……!」
まあ、勿論私はそんなことには興味も無いんだけど――
【主催】
「――真理学園!」
【???】
「はい!」
――――――。
………………??
【鞠】
「――は?」
【紫上会】
「「「え?」」」
【他】
「「「え?」」」