5.16「悔いの帰り道」
あらすじ
「敵なんじゃ、なかったっけ……」砂川さん、迷いを持ちます。そろそろ益々エグい展開に入ってくる5話16節。
砂川を読む
Stage
蛙盤区
【笑星】
「じゃねー、鞠会長!!」
【深幸】
「またなー」
【六角】
「このままゲームセンターにでも行くか四粹!!」
【四粹】
「……受験の準備は大丈夫なのですか、六角さんは」
【菅原】
「私は直帰しよーかな。それじゃ」
……各々、帰路についた。
私も……凄まじい疲労感を背負って、歩き出す。
車を呼んでもいいのだけど、何かそういう気にもならなかった。風も丁度良いのが吹いているし、折角だから歩いて帰ろうとか思う私。
……ただちょっと蛙は五月蠅いけど。
【鞠】
「……何で、あんなこと、云っちゃったかな」
ご両親とのやり取りを思い出す。
自己評価でいうと、酷かった。あれは酷い。
だってさ、ただ団体関係の論理をたったひとりの為にねじ曲げるわけにはいかない、とでも云えばあの人達は分かってただろうし納得もしてくれたと思う。ていうかあの時既に思ってた。野球部の監督と同じだ、大人の発言力で以てしても紫上会の意見を上書きすることはできない、それを学園と長い附き合いの2人はよく分かっていただろうから。
にも関わらず私は、「勝負」という観念で2人をねじ伏せた。いや、その論理というよりは、私の沸騰した感情に応えさせてしまった、といったところだ。これはない。先輩に云ったら怒られるレベル。
【鞠】
「……でも……」
イライラしてしまったというのも、事実なわけで。
書記が理解されないこと。
書記の心を掻き乱すこと。
……私はソレを、大変恨むというのだ。
【鞠】
「敵なんじゃ、なかったっけ……」
味方にしたいわけじゃない。そんなのは……要らない。
まあその辺は別に考えなくてもいい。実際今発生している敵対構造において、書記と私は同じ側に立つ。それだけで書記を守る理由にはなる。
少なくとも今やっていることに、間違いはないのだから。なら、歩き続ければいい。
【鞠】
「私は……勝者なのだから」
彼を理解できない奴らのことなど、知ったことか。
……………………。
莫迦な話だとは思うけど。
その時の私は、そんな莫迦なことすら分からなくって。
【信長】
「――――――――」
彼を理解していなかったのは――他でもない、私だったんだって。
分かってなくって――