4.35「深幸ラスト」
あらすじ
「だから、俺はこれからも、お前に嫌がらせしてやんよ」砂川さん、日常に帰還します。深幸くんが何かに結論付けた、そんな35節。次回から5話となります。
砂川を読む
Day
5/27
Time
8:15
Stage
霧草区
【鞠】
「……………………」
月曜日。普通に登校日。そんでもって授業日。
私は疲労困憊なまま歩いていた。
* * * * * *
【兵蕪】
「な――なんじゃこりゃあぁああああああああああああああああ!?!?(←ビデオ見ながら)」
【汐】
「兵蕪様……このチャラ男に、判決を」
【兵蕪】
「有☆罪――!!!」
* * * * * *
土曜日帰ってから、今朝がたまで、私は尋問されていた。否定し事実を述べても信じてくれず、疑うべき隙は全て時間をかけて取り調べしやがった。
有り得ない休日の消費だった。もしかしたら体育祭より疲れたかもしれない。
【鞠】
「……疲れすぎて、先輩に電話するの、忘れちゃってるじゃん……」
今日にでも、電話かけてみようかな。体育祭がどんだけ悲惨だったか、教えないと。
それにしても本当、眠い……ただでさえ何の価値も無い普段の授業で兎に角起き続けるだけの6時間。サボりたい。私はこんなヤンキーみたいなことを思う女子じゃなかった筈なのに。
紫上会も体育祭が終わった途端今度は後始末的な仕事が多量発生する。提携企業にまた挨拶しに行くし、実行委員と反省会もするし、それら全てを資料にまとめ次代に残す……できれば6月上旬までに全て片しておきたい。またお泊まりしなきゃいけないかも。
なのでガバを削減して可能な限りスムーズに仕事を処理していくことがこの時期求められるのだけど、この体調で大丈夫か私。
【鞠】
「……それも、これもッ……」
アイツの所為だ……。
Stage
紫上学園 正門
【深幸】
「……ん」
そう、コイツのせいだ――
って何故居る。
【鞠】
「(誰か待ってるのか)」
……気付かれたが、別に仲が良いわけじゃないし、というか基本険悪だし、いつも通り私はスルーを決め込んで――
【深幸】
「……うっす、会長」
何故話し掛けてくる。
【鞠】
「…………(←スルー)」
【深幸】
「…………」
……何故附いてくる!?
【鞠】
「何の嫌がらせですか。どこまで私を苛つかせれば気が済むんですか」
【深幸】
「スルーすんなや。オマエだって結果的に俺たちに嫌がらせしてるようなもんじゃねえか。敵扱いして仕事くれねーんだからよ」
【鞠】
「事実そうでしょう。特に……アナタハ……」
【深幸】
「……疲れてんな、お前……」
まああの件については、コイツよりも団長に対して殺意みたいなものを抱くが。そして私の体力を引き続き奪い続けている似非お姉ちゃんメイドが最高に面倒い。
とはいえ、元からこの人は私の敵筆頭。私を蔑むに加えて、私を陥れうる力を持つのが体育祭でよく分かった、紫上会会計。平行線を思わせる存在色。結局何も、変わることはないだろう。これからも……
Stage
1号館 2F廊下
【深幸】
「……自分で掘った溝……ふっか――」
【鞠】
「……? はい?」
【深幸】
「ま、それならそれで今はいいけどさ。菅原先輩曰く、我が儘勝手な会長をよく知り、時に合わせて時に反発するのが周りの役目らしいからな。だから、俺はこれからも、お前に嫌がらせしてやんよ」
【鞠】
「……最ッッ悪なことだけは分かりました」
あの団長からとんでもないものを引き継ぎやがったこととか。
【深幸】
「ありがたく思えっつーの」
あと、何かヤケに今日の会計、笑ってるんだけど。まだ体育祭の余熱が残っているのだろうか。そのまま熱中症でずっと寝込んでればいいものを。
【深幸】
「お前みたいな、とんでもない奴に合わせられるのは、ここじゃ俺ぐらいなんだからよ」
しかし多分、そんな私が切望するような好都合は起きないのだろう。
この人は……ダサくてもそれをやり通そうとする、非常に厄介な才を持ち合わせているのだから。
【深幸】
「そんなわけで。ま……これからも、せいぜいよろしく頼むぜ――会長」
【鞠】
「…………」
云うだけ云った会計は、自分の教室に入っていった。
……………………。
何だ。
【鞠】
「何なんだ、アイツは……」