4.32「似合ってる」
あらすじ
「――は、え……? 結果発表……?」砂川さん、最後の仕打ちにノックダウンします。見せつけられると私は取りあえず盛り上がるタイプな4話32節。
砂川を読む
【司会】
「ゴーーーール!!! 紫上最強カップルリレー、勝者は白虎チーム――砂川・茅園ペアーー!!!」
……紐を解いて、膝に手を着き……呼吸を落ち着ける……。
【鞠】
「はぁ……はぁ……はぁ……!」
な、何とか勝った……ていうか――
【鞠】
「余裕だったじゃないですか……」
もうちょっと加減しても普通に勝てたんだろうけど、勝たなきゃいけない大一番で力加減するなんて鋼鉄のメンタルを私は持ち合わせていない。
それに……
【深幸】
「ぜーー……ぜーーー……」
今地面に転がってるコイツが私に適応できていなければ、まず勝てなかったのだし。ますます精神的余裕は無かった。
今、その分の解放感が凄まじくて、安定した呼吸を邪魔してくる。あぁああ吐きそう……。
【深幸】
「ぜぇぇぇぇ……ぜぇぇぇぇ……も、う……無理、走れねえ……」
私の近くで、身体も態度も大きい彼が、私よりもへばって倒れている。
……いつもそうだ。口は偉そうで、いざ私に関われば基本的にダサい。
【深幸】
「へ……へへ……お前、ほんっっっと……」
【鞠】
「…………」
【深幸】
「バケもん、だわ……」
……だけど。
【鞠】
「……貴方は、基本的に人を……特に私を苛つかせてばっかりですが――」
【深幸】
「……あ――?」
【鞠】
「――懐刀というのは、案外似合ってるんじゃないですか?」
【深幸】
「――――」
取りあえず、やっと解放されたわけだし……さっさと退場口から席に戻ろ――
【学生】
「あ、待ってください会長、結果発表があるんで……」
【鞠】
「――は、え……? 結果発表……?」
【深幸】
「……ああ……そういや、そんなのあったなぁ……忘れてたわー……」
【鞠】
「……???」
……この学園ほど。
「結果発表」というものに嫌な予感が疾走する所は無いと思う――
Time
15:30
【司会】
「それでは、毎年恒例の結果発表式です! 第1位、砂川・茅園ペア!!」
わざわざ、北側壇上に上がらされた私と会計。
……怖い。怖い怖い怖い、何で立たされてるの? 恒例って、何……?
【司会】
「それでは……お2人とも、お願いします!!!」
【鞠】
「は――? お願いって――」
【深幸】
「……悪い――」
【鞠】
「へ――」
刹那。
私の視界、上空を向く。
【司会】
「今年度の前期紫上最強のカップルは……異論は色々出そうだけど、この2人だーーーー!!!」
【観客】
「「「うおおぉおおおおおおおおおお!!!!」」」
【白虎】
「「「FOOOOOO!!!」」」
【汐】
「グハァ……!?!? な……何その、新しい伝統ォォ……!?(←吐血)」
【宮坂】
「HAHAHA!!! 災難ここに極まれり!!」
【笑星】
「……うーーーー……」
【四粹】
「これはまた、会長、荒れそうですね……」
【菅原】
「はーーはっはっはっはっはっはお幸せにーーーーー!!!」
【信長】
「殺されますよ……団長……」
……!?!?!?!?
【鞠】
「んんんんんんんんんん~~~!?!?」
【深幸】
「この競技で優勝した――つまり紫上最強カップルリレーの覇者は、それを見せつけるんだとよ……」
【観客】
「「「ナーーイスカッポーーーーーウ!!!(←撮影)」」」
【深幸】
「俺らが最強のカップルですって……御姫様抱っこして……」
【鞠】
「――――――――」
……何だ……。
何だ、この仕打ちは……。
【鞠】
「絶対――絶対、赦さない……オマエトダンチョウ、ユルサナイ……」
そっから若干、私の記憶はもはや曖昧だった――
【深幸】
「…………」
* * * * * *
【鞠】
「――懐刀というのは、案外似合ってるんじゃないですか?」
* * * * * *
【深幸】
「……んなこと、初めて云われたなぁ――」