4.29「緊急事態!」
あらすじ
「もう何をやってもダメが元々ってんなら――」深幸くん、咄嗟の決意。突然のアクシデントを抱えた白虎チーム、そしてもう次の流れがバレバレな4話29節。
砂川を読む
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15:15
【笑星】
「あー……楽しかったー……!!」
【四粹】
「流石に草臥れましたが……」
【信長】
「普段使わない筋肉を使った感じがするな」
退場口で御輿を解体中……
【鞠】
「ささささっ」
アイツは着替えに校舎に走って行った。マントを羽織りながら。
……もうちょっと、見ていたい気がしたんだが。
【深幸】
「……はは……そっかよ……」
結局、何もかも、返り討ちの気分だな。
【信長】
「深幸?」
【深幸】
「何でもねえよ。さ、早くバラバラにしちゃおうぜ――」
【菅原】
「茅園! 松井!」
……団長が、走ってきた。随分本気で走ってきたみたいで、息が上がってる。
【深幸】
「え……どうしました団長? アイツはもう着替えに行っちゃいましたけど」
【菅原】
「それも残念だが、それどころじゃない事態が起きているの。臨時会議よ」
【信長】
「臨時会議――?」
……………………。
【深幸】
「はぁっ!? 欠員!?」
団長、副団長が急遽揃った。
緊急事態、それは別に複雑じゃない。人員欠如が発生したのだ。
【副団長】
「先ほどの部活対抗リレー前編に出ていた陸上部の阿部先輩が、足をやってしまって……」
【信長】
「阿部は、確か――」
【菅原】
「そう、次の……カップルリレーの出場選手だったの」
それは……確かに、とんでもない事態だった。
【信長】
「そうなると、阿部・大場ペアは欠場……1ペアしか出場できないとすると……」
【深幸】
「全チームで計7ペア。最高得点200点を逃せば、確実に100点くらい差が発生してしまう……ただでさえ今最下位なのに……!」
【菅原】
「……その次の、最終種目は私たち3年生のクラスリレーだけど……希望的に予想しても、六角率いるB組には勝てないわ。つまり、最高得点の150点を奪われるのはほぼ確定……2位以下の正確な得点配分は非公開だけど、間違いないのは……このカップルリレーで1位を取らなきゃ、私たちは絶対勝てない」
【副団長】
「田町・新宿ペアの実力は……?」
【菅原】
「正直……厳しいわね。4位を取れればラッキーというくらい。私の調査では朱雀と青龍が強敵なのよ」
【深幸】
「おいおい……」
このカップルリレーで1位を取り、玄武に逆転した状態でクラスリレーに行かなければ、俺たちの優勝は無い。
俺たちは、こんなに頑張ってきた……だから、そんなアクシデントで欠場を出して負けるなんて、そんな不完全燃焼、絶対嫌だろう。
【信長】
「だったらせめて、代打のペアをすぐ作れば……」
【菅原】
「過去に沢山例はあるから、実行委員も認めてくれる筈。だけど当然、勝つ為の代打を呼ばなければ結局は最悪な負け。そして、そうなる可能性は……非常に大きい」
【副団長】
「ど、どうして……!?」
【深幸】
「カップルリレーの最高得点が全種目で一番デカいのは、それだけ難しい種目だからなんだよ。二人三脚、長距離走、障害物走、この3つを同時に練習する日々を重ねないと、この種目相手に太刀打ちできねえ」
つまり、最も欠場を出してはいけないところだったんだ。
【副団長】
「そんな……ここまで、きて……」
【副団長】
「…………」
【信長】
「せめて大場の足を引っ張らない奴を見つけることができれば……」
【菅原】
「大場には既にこの状況を伝えているけど、「阿部くん以外とペアを作るのは、正直嫌だ」と云ってるわ」
【信長】
「そんなことを云ってる場合でないだろうに……!」
【副団長】
「いやでも……彼氏が居るのに、彼氏じゃない人とカップルリレーという名の種目でペアを作るのは確かに嫌ですよね……」
云い換えれば、欠場を出してしまった時点で、もう他に太刀打ちできない団員しか居ない俺たち白虎チームは――
【深幸】
「……………………」
――いや……待てよ。
居るだろ?
たった一人、俺は知ってるじゃねえか。
【深幸】
「…………団長。もう何をやってもダメが元々ってんなら――」
【菅原】
「茅園?」
【深幸】
「――俺に、任せてくれませんか?」