4.27「懐刀」
あらすじ
「俺じゃなくて、会長でもいいんじゃないか?」砂川さん、休息の一コマ。今回は短いですが次回は長くて煌めく予定の4話27節。
砂川を読む
Time
14:15
【笑星】
「うおぉおおおおおおおおお!!!」
【司会】
「堊隹塚くん、速いです!!」
クラスリレーで雑務が脚光を浴びているその一方。
【深幸】
「お疲れさん」
ヒーローが帰ってきた。
【瑠奈】
「にーちゃん、すごかったーー!! いままででいっちばん!!」
【子ども】
「ナミダーー!!」
【子ども】
「ナミダふたりいたー!!」
一瞬で子ども達に囲まれる。
【信長】
「……児育園と附き合いが深いのを利用して、子ども達が確実に盛り上がってくれる選曲をし、更に派手な小演劇を混ぜビジュアルボードを使って映像を見せることで全体の印象を底上げした……見事な作戦だったよ」
自分たちのダンスをどれだけ極めようと、その場数分のパフォーマンスの中で観客の「声」を貰うには、細かい技術よりも六角や雑務の持つ「勢い」の方が重要になってくる。
ダンス応援という特殊な種目で練るべき策は寧ろ、補助的なもの。如何にして客を盛り上がらせるか……そこを最も工夫したのがチャラ男だった。
白虎が1位を取るのは当然だったと云える。
【深幸】
「……どうだったよ。取ってきたぜ、1位」
【鞠】
「……貴方とは極めて平行線な気がしました」
【深幸】
「そっかよ」
私に見せつけると意気込んだ割に、私は随分素っ気ない感想を云っただけだが、チャラ男はそれ以上何も問うてこなかった。
それで……良かったのだろうか。それを問う意義は私には勿論無い。
【璃奈】
「おねーちゃん、いっしょにおどってくれたー!」
【深幸】
「おお、マジか。ちゃんと御礼云っとけよ」
【璃奈】
「おねーちゃん、ありがとー! たのしかったー!!」
【鞠】
「…………(←ぐったり)」
やれやれ……快適空間は、一体どこに消えてしまったのやら。
【信長】
「深幸、凄く良かったじゃないか! 完全にお前が主役だったぞ!」
【深幸】
「サンキュー。ただ、主役が俺になっちまってたのは申し訳ないんだがなぁ」
【信長】
「またそんなことを……俺よりも、お前の方が中心に立つのに向いてるぞ絶対」
【深幸】
「いやいやお前、俺の数年の努力否定すんなって」
……何か後方で気持ち悪い押し付け合いが始まっていた。相変わらず、譲らないチャラ男である。
【深幸】
「俺はやっぱ、お前を差し置いて主役になるよりも、お前の懐刀になる方が合ってるって」
【信長】
「…………ふと思ったんだが、深幸――」
【深幸】
「ん?」
【信長】
「――俺じゃなくて、会長でもいいんじゃないか?」
【深幸&鞠】
「「……はぁ!?」」
何か突然私が出てきた。
【深幸】
「お……お前、何云ってんの?」
【信長】
「いや、お前ほどの男が書記の懐刀って……何だか規模が合ってない気がしてな。ならいっそ、会長の懐刀な方が格好いいじゃないか」
【鞠】
「即刻捨てます」
【深幸】
「何で信長じゃなくてコイツに尽くさなきゃいけねーんだよ……!! そんな心変わりできるかぁ!! そしてこの不似合いっぷり!!」
【信長】
「いや……正直、案外良いコンビなんじゃ、と思うときが最近……」
【深幸&鞠】
「「…………」」
嗚呼、最近確かにちょっと一緒に居すぎたか……その所為でそんなこと云われてる……?
ちょっと気分悪くなってきた……今から団体リレーなのに……
【鞠】
「って、そろそろ着替えた方がいいか……」
【笑星】
「ただいまー! って鞠会長、そろそろ衣装チェンジしとこー!」
よし、この平穏の死んだ場所から取りあえず脱出だ。
まあ今からやることも、相当鬱屈ものなんだけど――
【深幸】
「…………懐刀、ね……」
【笑星】
「あ、茅園先輩凄かったねー!! ……って、どうしたの?」
【深幸】
「いや、何でもねーよ。んじゃ、俺たちも御輿準備すっか!」
【瑠奈】
「にーちゃん、またなにかやるの?」
【璃奈】
「おねーちゃん、どこいっちゃったのー?」
【深幸】
「へへっ……お前ら、“かいちょー”の本日最大の晴れ舞台を、今から見せてやるよ! 楽しみにしてな!!」