4.02「まさかの指名」
あらすじ
「会長、これは別に嫌がらせをしたいわけじゃなくて、一応理由があってですね……」砂川さん、いきなり不運に見舞われます。作者的には10話中この4話が一番好きです。どうぞご期待なその2節。
砂川を読む
Day
5/6
Time
9:00
Stage
1号館 2D教室
……GWが明けた。
といっても私にGWなんて無かったのだけど。主に紫上会とか紫上会とか紫上会とかで。
そんな全然休めなくて惜しげも無くブルーになっている私を余所に、今週も授業の平日が始まるのだった。といってもこの日の1限は特殊なのだけど。
【秭按】
「今日のロングホームルームは、体育祭についてです。このクラスの体育祭実行委員は……阿部さんと阿部さんね。よろしく」
【阿部】
「はい」
【阿部】
「うっし、いっちょかましてやるか……!」
【鞠】
「(……体育祭)」
当然一般クラスよりも行事の準備にいち早く取り掛かる紫上会の私が、そういうイベントが迫っていることを知らないわけもなかった。
4月のメインは実力試験だったけど、5月の行事は主に2つ……中間試験と、体育祭。
中間試験は特に実力試験のようなご褒美があるわけではないのに、結果発表式という舞台もあるせいか、皆総じて気合いを入れるそうだ。まあそれはこの学園だし別にいっかという感じだ。私も少しは慣れてきただろうか。
ただ問題は後者の体育祭で、正式名称が「紫上最強体育祭」という初見で顔を真っ青に染めてきた恥ずかし過ぎるイベントもまた名前負けしない盛り上がりを見せるそう。
……その恒例のお祭り企画においても、紫上会は多くの仕事を持っていた。どちらかというと裏方として。
【阿部】
「それじゃ、順番はまだ決まってないんだけど、種目を書いてくねー。だいたいいつもと同じだけどー」
表に立ち、学生を主導していくのは彼ら体育祭実行委員ということになる。
勿論紫上会はその上の組織になるので、体育祭実行委員の会議・決定内容は悉く紫上会が確認し、承認を取るという形式になる。GWの半分は主にその作業で消失していった。そして体育祭を開催するにあたり、必要な準備――特に環境面をこれから紫上会が人を集めて整えていく、という感じだ。
……過去の資料を見る限り、その準備さえ終わらせておけば当日の紫上会の仕事は案外少ない。体育祭実行委員が殆ど働いてくれるということだ。
【鞠】
「……めんどくさいことには、変わりないけど」
紫上会とはいえ、学生。学生ならば勿論、この体育祭で体育しなきゃいけない。
先輩に多少肉体改造されたけど、運動嫌いなのは変わらない……。
まして目立ちやすい祭りの舞台で何かやらかそうものなら、この1ヶ月の努力が水疱に帰し、またコイツらから莫迦にされる日々を許してしまうことに繋がってしまう。
間違っても、目立ってはならない。
【阿部】
「ひとり必ず1種目は出るようにー!」
目立たない種目を……そうだ、玉入れ、これなら大丈夫だろう――
【阿部】
「あっ、3000m走にはもう会長さん入ってるのか。じゃああと長距離1枠~」
――って何してんのおぉおおおお!?!?
【鞠】
「ちょ――!?」
【信長】
「あ、あー……会長、これは別に嫌がらせをしたいわけじゃなくて、一応理由があってですね……」
思わず起立してしまった私に、そういえば同じクラスの会け……いや、コッチは書記か、書記が口を挟む。
【信長】
「紫上最強体育祭の伝統の一つなんですが……紫上会会長がいるクラスは自動的に長距離走枠に会長が入ることになってるんです……会長は目立ち輝けという学園の空気があるので」
何その伝統ッッ!! どんな伝統ッ!? やっぱ嫌がらせに他ならないし!!
【信長】
「あー……じゃあ、俺また、長距離入ろうかな……」
【阿部】
「云われなくても松井は強制的に長距離だしな。頼むぜエース!!」
【阿部】
「砂川さんはぁ……ドンマイwwww」
【クラスメイツ】
「「「うえぇえええいwww」」」
【鞠】
「…………(←着席)」
誰も助けてくれない……まあソレは最初から期待してないけど。可哀想とか絶対どいつもこいつも思ってないだろう。なんてったって私嫌われてるし。
そして、だからこそ私が長距離走で醜態をさらす姿を楽しみにしているんだろう。
【安倍】
「…………」
【鞠】
「……はやく卒業したい……」
【阿部】
「それじゃ一番嫌なモノが埋まったところで、お待ちかね玉入れ選抜ー!!」
【クラスメイツ】
「「「うえぇえええい!!」」」
また心が真っ青になっていく私を余所に、体育祭の話合いは和気藹々と盛り上がっていった――