3.08「狙うは」
あらすじ
「私のような存在を――最初から、警戒していた――」冴華ちゃん、諦めません。3話の山場は作者的に越えたつもりですが、まだ続けちゃう3話8節。
砂川を読む
【冴華】
「……な……何で……」
事件の報告を聞いた。
随分と怯えた声で……その時点で結果がどうだったのか何となく予想はつくけれど、事態は私の想像の遙かに超えていた。
【冴華】
「監視カメラ――? あの場所に、いえ、そもそも外にそんなもの設置した覚えは――」
――気付く。
そんな、有り得ないカウンターを出してくるとしたら、ソイツは――
【冴華】
「ッ……!!!」
アルスを取り出し、とあるアプリを開く。これは自作で……学園の監視カメラにアクセスして、データを確認することができるものだった。
紫上学園のセキュリティ強化は、主に私が担当してきた。表にはあまり立ちたくなかったし、監視カメラなら設置するだけでいいからだ。そして……情報を握りやすくするため。これは紫上会とは全く関係無い、故に許されない筈の私目的。
勿論、私がアプリを通してデータにアクセスできるなんて事実は、前紫上会の誰も知らない。私はこの学園で最も、情報を掌握する者なのだから――
【冴華】
「まさか――このデータは総て、フェイク……!?」
――だけど。それすらも。
あの野蛮人は……私から……。
【冴華】
「監視カメラ全てが……新しいものに刷新されている……」
データのブックマークを総て解除して、一からこの学園の監視カメラへとアクセスし直す。
すると、先とは全く異なる画面の展開に落ち着く。
学園全体に、私の知らない、私の関係していない監視カメラのみが並ぶ。新調どころじゃない、数倍以上さらに追加設置もされている。
全てが新しいものになっているから、条件を満たさないこのアプリではアクセスできない……学園の予算を使ったのかポケットマネーで賄ったのか、それは知らないけど、ここで発生する疑問は……
どうして全て、変える必要があったのか。
去年設置したばかりの新しい監視カメラはまだまだ新品だったのだから、それはそのままでも良かったはずだ。その方が間違いなく予算の節約になる。
その無駄な出費――目的があるとしたら。
【冴華】
「私のような存在を――最初から、警戒していた――」
映像データは非常に強力な証拠。
前年度の予算の都合上、ほぼ校舎内に限定したけど、これで学生たちのプライバシーをかなり深く観察することができるようになる。となれば、「ネタ」も多く入手できる。
野蛮人相手だって、これは有用である……揺すり紫上会の座から引き摺り落とすのに、これは必須だったのだ。
だから――奴は、それを封じた……!
【冴華】
「ッッッ……ッ――!!!」
つい、アルスを床に投げつけてしまう。
だがどんなに物を投げつけたって、歯を強く噛んだって、髪を引っ張ったって……収まりは現れない。
まさか、私は。
情報戦術でも、彼女に負けていると――?
【冴華】
「そんなッ、わけがないッ……! あんな野蛮人に、私が劣っているだなんて――ッ……!!」
あるはずがないあっていいはずがない、あんな学園から来た奴なんかに泥臭い芋女なんかに……
私は絶対、その座から落ちてはならないのだから。あの子の将来だって、掛かっているのだから。
【冴華】
「まだ――ある」
手はある。幾つも、まだ。そして狙うは――
【冴華】
「実力試験……!」