3.18「笑顔にする方法」
あらすじ
「……結局、貴方は何がしたいんですか?」砂川さん、後輩雑務と向き合います。今更過ぎるんですが、3話のメインは笑星くんな3話18節。
砂川を読む
Day
4/26
Time
15:15
Stage
紫上会室
【笑星】
「会長!! 仕事ください!!」
【鞠】
「嫌です」
……このやり取り、もう多分3桁はやった。
【深幸】
「お前も諦めねえよなぁ笑星……大したもんだよ。俺はとっくに諦めてるぜ」
【信長】
「諦めるなよ……」
【四粹】
「……会長、本日のご予定は」
【鞠】
「解散」
【深幸】
「はやっ!? てか集まった意味は!?」
集めてないし。そっちが勝手に来てるだけだし。
【信長】
「……よく見たら、正装ですね。会長」
【鞠】
「学園外の顔なじみ企業とやらに挨拶しに行きます。なので今日はガチで何もやることないので帰ればいいと思います」
【深幸】
「俺ら全然その情報知らなかったんだが……!! 正装とか用意してねえよ畜生!!」
【四粹】
「手前は一応正装してきましたので、同行させていただきます」
【鞠】
「……監視の為ですか」
【四粹】
「そう受け取っていただいて構いません」
……まあ、実際私はコミュ障なので、この人が居た方がいざという時、色々盾にできるかもしれない。そこのチャラ男たちが来るよりもよっっぽどマシと云うべきか。
【笑星】
「俺も行きます!! 正装、無いけど!!」
【鞠】
「論外」
てか早く出発したいんだけど、させてくれない。何なんだホントこの雑務は。
【笑星】
「お願い会長!! 俺、邊見と約束したんだよ……皆を笑顔にするって。だから俺、紫上会としていっぱい、働きたいんだ――!」
【鞠】
「そんなの、私には関係無いでしょう」
……昨日を経て、完全復活したみたいだ。というか今までを遙かに凌ぐほど、元気で、しつこい。
熱意を買う企業はこの世の中に腐るほどあるけど、私は要らない。
……………………。
【鞠】
「……結局、貴方は何がしたいんですか?」
【笑星】
「え――?」
……別に、興味なんて無いのだけど。時間の浪費だけど。
【鞠】
「皆を笑顔にするとは、どういう意味ですか。皆とは誰ですか。笑顔にするとは具体的に何をしてそうさせるんですか」
私は、それを問うていた。
【笑星】
「……………………」
もっとパニックになると思っていたけど、案外すぐ答えを返してきた。
【笑星】
「この学園に通う皆を、俺を支えてくれた邊見を、姉ちゃんを、父ちゃん母ちゃんを、兎に角幸せにしたい! 笑顔にする方法は、正直まだ具体的に分かってない。だから――会長に附いて行きたい!!」
【鞠】
「莫迦ですか」
【笑星】
「一蹴!?」
いや、莫迦でしょ?
【信長】
「か、会長……幾ら何でも真剣な回答にそのコメントは……」
【深幸】
「お前も停学してしまえと思っちゃうんだけどマジで」
【鞠】
「事実莫迦でしょう。何でそれで私に附いて行くんですか」
【笑星】
「だって、会長凄えんだもん!! 全学生を敵にしたって、平気で返り討ちだもん!!」
【鞠】
「分かってるじゃないですか。私は貴方たち含めて学生全員敵と見なしてるんです。その私に附いて行くとか云ってるんですよ貴方は」
【笑星】
「…………あ」
あ、じゃねえよ。
【鞠】
「……貴方の親友は、別に貴方に書類作成や商談をしてほしいとか、思ってないと私は思いますけど」
【笑星】
「え――?」
【鞠】
「莫迦だろうと何だろうと、貴方だって勝者なのだから。私の厄介にならない程度で、好きにやればいいんじゃないですか。この学園の人達を笑顔にするっていうなら……間違いなく私よりも貴方の方が向いてるんですから」
それだけ云って、エレベーターへ向かう。
【笑星】
「……俺の、やりたいように……」
【深幸】
「まあ……最後のには、俺も賛成だな。笑星は何つーか、見てるだけで癒やしくれそうだし。芋女とか見てても虚無感しか湧いてこねえ」
【信長】
「笑星にしかできないことがあるなら、それが紫上会における笑星の意義となる。俺も、そういうのを探すべきなんだがな……」
【深幸】
「仕事がねえからなぁ……全部、持って行きやがるから」
【笑星】
「……なら、創ればいい」
【深幸】
「は?」
【笑星】
「俺、まだ全然信頼されてないだろうから! ちょっと今から部活とか回ってみるよー!! この前のリベンジ!!」
【深幸】
「はぁ!? ちょ、お前それやって、事件起きたろうが!! ちょっとは怖がれっての!!」
【信長】
「……行ってしまったな……どうする?」
【深幸】
「……一応、後ろから附いていくか……」
Stage
紫上学園 外
【四粹】
「……会長が、彼に問うのは少々意外に思いました」
……案外話しかけてくるんだな、この副会長は。
私の何を探っているのか。不気味だ。
【鞠】
「何かおかしいですか」
【四粹】
「いえ。また一つ、感心してしまっただけで。……会長も、彼を一つ評価していたのだな、と」
【鞠】
「……………………」
【四粹】
「――癪に障りましたでしょうか。失礼しました」
まあ、確かにそんなことになってしまうのか。アイツは私よりも一つ優れているものがあると云ったのだから。
ただ、それは普通に事実だし。それに――
* * * * * *
【邊見】
「負けなら負けで、いいですよ。凄く悔しいけど、僕は勝った筈なのに……そう思うこともあるけど、でもそれ以上に今の紫上会に期待してるんです。砂川会長に」
【冴華】
「莫迦なッ!! あの野蛮人に一体何の期待ができるというのですか!!」
【邊見】
「えっちゃんを、育ててくれると思います」
* * * * * *
【鞠】
「……何で、私なんかにそんな期待をするかなぁ……」
【四粹】
「え――?」
【鞠】
「何でもありません」
結局、私は彼のことも苦手なんだろうな、と思った。