2.02「紫上会室へ」
あらすじ
「君は来るべくしてこの学園に来たのでは、と私は思ったよ」砂川さん、本拠地に足を踏み入れます。マップというか見取り図みたいなものも余力があれば作ります2話2節。
砂川を読む
Day
4/11
Time
8:15
Stage
紫上学園 外
【鞠】
「……………………」
……………………。
【鞠】
「……夢じゃなーい……」
Stage
1号館 2D教室
【鞠】
「……………………」
【信長】
「すっげードヨーンとしてる……」
私の……穏やかな、生活……
グッバイ……
【秭按】
「ごきげんよう、それではHRを――砂川さん、大丈夫ですか……?」
【鞠】
「……………………」
【秭按】
「……私の気が利かなかったのも一原因だから、何も云えないわ……」
グッバイ……――
Time
15:15
Stage
紫上学園 3F連絡通路
【信長】
「……こっちです」
……気付けば、放課後になっていた。あれ、お昼ご飯食べたっけ。まぁいいや……
それより、今私は、遂に問題の紫上会の活動場所に、案内されていた。
偶然にも同じクラスに私と同じ“勝者”が居たので、行き方の一つを教わっていたところだ。どうやら、7号館に存在するらしい。
【信長】
「……お」
【深幸】
「うっす、信長。あと芋」
【信長】
「もっと柔らかい会話を心懸けようとは思わないのか深幸……」
【深幸】
「って云われても、コイツに至っては会話する気すらねえじゃんかよ」
【鞠】
「……………………」
【深幸】
「歴代で初っ端からこんなローテンションな会長他に居るんかね……ったく。取りあえず、案内よろしく」
【信長】
「ああ。それじゃ、職員室を抜けるぞ」
この前も過去問を取りに訪れた職員室……
Stage
7号館 職員室
それを、本当に真っ直ぐ、抜けていく。
ここの職員室は、外観を意識した円形構造をしている。児育園とC等部教諭エリア、B等部エリア、A等部エリアに仕切られた目的の先生のもとへ、学生は外周廊下を使って近付いていくことになる。
中央に円形エレベーターがあるようで、その円周沿いにまた小さい道が作られ、そこから外周廊下に2本ほど道が伸びている。今私はそのうちの一本を渡っていることになる。
【深幸】
「俺、此処初めて通ったかも」
【信長】
「まあ、それが当然だな。例外もあるが、基本的に職員室を縦断する学生は紫上会だけだからな」
……勿論、エレベーターだって。
【深幸】
「丸いエレベーターなんて俺乗ったことねえよ……すっげー」
【信長】
「その反応、1年前の俺を見てるようだよ。砂川さんは――」
【鞠】
「……………………」
【信長】
「ノーリアクションは、俺初めて見たな……」
別にノーリアクションなわけではない。一応驚いてはいる。
取りあえず紫上会という組織の部屋が、職員室や学園長室よりも上に存在するという新事実に。
Stage
7号館 学園長室
【信長】
「失礼します――!」
で、下にある職員トップ層のトップ、学園長の部屋に入る。
【宮坂】
「やあ、2年生諸君」
【深幸】
「3人だけっすけどね」
【宮坂】
「ふふ、確かに」
フランクな会話を飛ばしながら、ある意味私をここまで陥れてる諸悪の根源が近付いてくる。
【宮坂】
「何故か恐ろしく睨まれているね。何かしたかな?」
【深幸】
「気にしなくていいっすよ……理由の方向性は何となく予想つくけど」
【宮坂】
「それにしても……何と云うか運命を感じずにはいられないね。君が我が学園の頂点に座すというのだから……」
【深幸】
「ん……学園長、コイツ知ってるんですか?」
【宮坂】
「いいや、特には。しかし全く知らないわけでもない。その少ない情報の中で……君は来るべくしてこの学園に来たのでは、と私は思ったよ」
【鞠】
「……来るべく、して……」
それには何か、カチンと来た。
【宮坂】
「……小難しい子だなぁ。本当、聞いてないぞー……まあいい、コミュニケーションの機会はこの先幾らでもあるだろう。ほら、学生手帳だ」
【深幸】
「学生手帳? それ、もう持ってるんすけど……」
【信長】
「デザインは同じだが、俺たち紫上会が携帯する学生手帳には、特別な認証チップが埋め込まれてるんだ。紫上会の関係する部屋に入る時に、コレが必要になる」
【深幸】
「初めて聴いたんだが……」
【信長】
「黙秘事項の一つだからな」
【宮坂】
「松井くんが居れば、私からの説明は不要だな……先に2人が上に行っている。合流してしっかり顔を合わせるといい」
【信長】
「ありがとうございました。じゃあ、行こうか。失礼しました」
……学園長室を、後にした。
もう二度と行きたくない思いがあるけど、立場を考えると誰よりも行く確率ありそう。ていうか確実にあるような云い方してたし。
【鞠】
「……はぁ~~~~~~~~ ~~~~~~~~~ ~~~~~~~~……」
【深幸】
「なっっっっっがい溜息だなオイ……ていうか芋女、お前あの学園長と知り合いなのか? よく分かんない答え方してたけどあの人」
【鞠】
「知りません」
【深幸】
「断言具合から学園長が既に嫌われてるのが分かったぞ……ほんとどうすんだこの芋会長……」
【信長】
「ま、まあ、取りあえず今は合流しよう。このまま、一つ飛ばすぞ」
【深幸】
「1Fが事務室、2Fが応接室とか会議室で、3Fが職員室、4Fが学校長室……あと2フロアあるな」
【信長】
「紫上会の管理する資料室に、紫上会室。どちらも一般学生には未知の領域だ」
未知とか要らない。
Stage
紫上会室
けど、未知の場所に来てしまった。
広い。当たり前だ。
抑もこの建物は円柱型、半径距離はフロアが変わっても大きな違いはない。つまり、100人は普通にいる職員が動き回りながら事務処理するに充分な広さを、このフロアでは僅か5人が動き回る。
どう考えても、広すぎる。
【笑星】
「あっはっはっはっはっは広すぎーーーー!!」
そしてうるさい。
【深幸】
「何やってんだアイツ」
【四粹】
「……一人1km走、だそうですよ」
【深幸】
「アホだ……」
【信長】
「頭良いはずなんだけどな……」
見たところ、置物は無いわけじゃない。極端な私物は片付けられている筈だが、今見える限りの視界では、冷蔵庫やらキッチンやら、ドデカい壁テレビやらソファやら、生活住宅かなって思ってしまう家事の充実具合が目立っていた。
そしてそれでも物が少ない印象だ。これは私の家なら実現できるかなってぐらいの富豪の家の間取り。莫迦じゃなかろうかこの学園。
【信長】
「堊隹塚~、止まれ~。集まるぞー」
【笑星】
「うっす!」
超広いリビングダイニングキッチンを進んでキャスター付きの仕切りで簡易設置されたカーテンを潜ると……
四角いテーブルにそれを囲む2つのソファ。ようやく会議室っぽい空間が現れた。仕事部屋っていうことだろう。
いや、そもそも仕事部屋以外の部屋が必要なのかという話だが。
【信長】
「……因みにあれが、会長席」
指差された方向には、若干孤立して位置する大きいデスクと社長が座りそうなチェア。
如何にも、という感じだった。アレに私、座れと?
【深幸】
「似合わね……」
見事に私の気持ちが代弁された。勿論嬉しくなどない。
が、似合わなくとも私は此処に座らなければならないのだった。指揮っていた男子の指揮でたちまちメンバーは会議用の席に座っていき……
【鞠】
「…………」
私は、会長専用の社長チェアーに座り、椅子の高さ分彼らを見下ろした。
【深幸】
「芋女の分際で何勝手に見下ろしてんだよ」
【信長】
「深幸っ……えっと、砂川――会長」
【鞠】
「――――」
身震いした。
【信長】
「流石に先が思いやられるな、コレは……」
【四粹】
「ははは……」
【笑星】
「???」
かくして、今年度の紫上会が集結した……。
