1.06「噂」
あらすじ
「紋切り型ではありますが、自己紹介をしましょうか」砂川さん、自己紹介黒歴史の開幕。本編が全然完成してないので10割の人が何のこっちゃ、と思うでしょうが雰囲気で察してほしい1話6節。
砂川を読む
Time
9:00
【秭按】
「では、親睦会を始めましょうか」
先生が帰ってきたことで、取りあえずひそひそチラッはまた止んだ。
ただ……もう私は夕方帰りって勢いでグッタリしているつもりだ。
【秭按】
「といっても皆さん、顔見知りばかりでしょうが。紋切り型ではありますが、自己紹介をしましょうか」
そして先生が初っ端からトドメを刺してきた。私が何をしたというんだ。
【秭按】
「出席番号順に。では朝田くんから」
【男子】
「えっと、自己紹介って何を云えばいいんですかね? 抑も俺、まだ自己を確立しきれてる自信がないのにそんな状態で自己を説明できるのかなって思ってるんですけど」
【秭按】
「大丈夫よ、充分現時点で朝田くんの個性が私に印象付いているから。それと、大半の学生は君と同じだから。大事なのは、中途な状態でも如何に進んでゆくか。恐れず語るといいでしょう」
【男子】
「先生……」
自己紹介で壮大な会話が発生していた。まさかとは思うけど、それを私ともやるつもりですか先生? 矢張り鬼ですか?
ああ……いっそ、これが夢で目を覚ますとベッドの上で……
……………………。
【鞠】
「(あわよくば、引っ越しすら夢で――)」
……………………。
…………それは。
どう、なんだろうな――
【秭按】
「次は……砂川さん」
【鞠】
「ぁ……はい…」
……………………。
――って私の番が来ていた!! 何も、考えていない!!
【鞠】
「あの……砂川、鞠、です――」
【秭按】
「何やらボーッとしていたようだから、私が質問を作りましょう」
今すぐここから走り去りたい帰りたい。
【秭按】
「砂川さんは、何か特技はありますか」
【鞠】
「え、えっと…………」
【秭按】
「趣味でもいいわ」
【鞠】
「……読書で」
【秭按】
「このクラスは図書委員に困らなそうね」
思いっ切り無理矢理会話に繋げてる感。あと図書委員確定? 鬼か。
【秭按】
「他には?」
【鞠】
「他……他……」
【秭按】
「…………」
鬼。
何か……何か、兎に角云わないと……あ――
【鞠】
「殺気を、作る……?」
【秭按】
「このご時世に見事重宝する特技を持っているのね」
兎に角過ぎた!
【秭按】
「殺気というのは感情的になれば、私も作れるかもしれないけれど……砂川さんは、意図的に作ることができる、ということね?」
【鞠】
「は……はい……」
【秭按】
「凄いのね。どうしてソレを身に着けようと思ったの?」
【鞠】
「いや、何か、必要に駆られたとかではなくて……その……色々、あって……?」
【クラスメイツ】
「「「(色々何があった!?!?)」」」
ッ!? 何か、視線がより濃くなったようなッ!!
【秭按】
「それでは、砂川さんの時間はこれくらいで――」
ああ、やっと終わる……
【男子】
「待ってください先生! 質問、砂川に質問あります!」
と思いきや別方向から奇襲。
【鞠】
「――!?」
【秭按】
「質問?」
【男子】
「聞いたんだけど……お前、真理学園出身って本当?!」
【鞠】
「!?!?!?」
な……
何で……
何で、ここで、真理学園が、出てくるの――?
【女子】
「ソレ!! 私もソレ聞きたかった!!」
【男子】
「俺も!」
【女子】
「私もー!」
今日、最大にクラスが盛り上がっている。
……そうか……だから、この人達は、朝から私を気にして――
【鞠】
「ッ…………」
身体が……急激に、冷えていくような、一方で熱い気もするような……
自分自身が、自分の制御から外れていってしまったかのような、混沌とした感覚に……足が震えて、思わず椅子に倒れるように座ってしまう。
【秭按】
「……どうして、それを君たちが知っているの?」
【男子】
「ってことは、やっぱ本当なんだ……! いや、村田の持ってきた情報だからまず間違いないとは思ってたけど……!」
【女子】
「真理学園……」
【男子】
「ホントに……マジかよ……」
【秭按】
「……松井くん?」
【信長】
「……現紫上会の中に、その、お喋りな奴が居まして……昨日、そいつが会話の文脈に任せて暴露してしまった、といった感じです。悪気はある意味、無いとは思うんですが……」
【秭按】
「……なるほど、紫上会なら確かに、知っていておかしくないわね。だけど……真理学園で、どうしてここまで盛り上がって――あぁ、そっか……」
【信長】
「皆、砂川さんの自己紹介タイムは終わってる。何か埒が明かなそうだから、そういう騒ぎは後にしてくれ」
……昨日の……
昨日、野蛮とか云ってきた人だ。あの人が、知っていて……それを思いっ切り、ばらまいた……。
【秭按】
「……有難う、松井くん。では次は――」
それが、引き起こすのは――