1.12「実力試験、当日」
あらすじ
「本日は実力試験日。各々、全力を尽くすように」砂川さん、入学早々ガチのテストを受けます。「実力試験」は本作、というか紫上学園では可成り重要な概念です。こうして見るとプロローグたる1話も随分大事なもの詰め込んだなぁと作者が内容うろ覚えな1話12節。
砂川を読む
Day
4/6
Time
8:00
Stage
霧草区
【鞠】
「此処でいいです」
本日、土曜日。
授業は基本的に無い曜日ではあるが、今日は例外的に、平日よりも重い日だった。
取りあえず、体調はいつも通り。良い気もしないけど悪い気もしない。普通。
【汐】
「……鞠はいつになったら、私を名前で呼んでくれるのでしょう……汐お姉ちゃんと云ってくれたら、私は更にテンションが上がって仕事が捗るというのに――」
これ以上テンションを上げられたら交通事故が起こる気がするので無視って歩き始める。
【汐】
「――あれ!? ノーリアクション!? いってらっしゃいませー――!?」
Time
8:15
Stage
紫上学園 正門
【笑星】
「おっはよ、邊見! その……今日、頑張ろうな……!」
【邊見】
「うん~。えっちゃんも。応援してるよ~」
【鞠】
「…………(←スルー)」
【笑星】
「あ、真理学園の人! おはようございまー――」
【邊見】
「はいはい、テスト日にまで迷惑かけないの~(←引っ張る)」
【笑星】
「襟が伸びるー……」
…………流石に、この日暇を持て余している人の姿は殆ど見えない。
伝統は伊達じゃない、ということ。
Stage
1号館 2F廊下
【冴華】
「あら」
【深幸】
「お……」
当然、スルー一択。
【冴華】
「あーあ、まさかこんな日にまで野蛮人を見なきゃいけないだなんて……」
【深幸】
「楽しそうだなお前は。てか芋女、おい無視すんな、芋で根暗ってホント最悪だからな! せめて明るく振る舞うとか補えや――」
スルー。
【深幸】
「……ったく。だから芋は面倒くせえんだ。ま、いいや。兎に角今はテストだ……」
【冴華】
「私も、そろそろスイッチを切り替えますか……貴方が紫上会に入ってくる確率は、案外あるやもしれませんね。応援はしていませんが、まぁ精々頑張ることです茅園」
【深幸】
「あんがとよ。俺も、テメエが落選するよう祈ってるぜ、クズ村田」
Stage
1号館 2D教室
……扉を開けると、これまでとの雰囲気の違いを感じる。
【信長】
「…………」
全員居るわけじゃないけど、居る人は全員自分の席に座り、参考書やらノートやらを開いている。
その様子を覗き見るような関心は当然無いけれど、見ずとも空気伝いに感じるものもある。巫山戯無しの真剣そのもの。私の話などする余裕も無いことだろう。多分教室に居ない人は、実力試験にそこまで拘りを持たないので取りあえず何処か別の場所に避難している。
云ってしまえば、戦場。意思無い者は立ち去るべし。
【鞠】
「…………」
ただ残念ながら、私は意思ある側として座るべきなので、取りあえず座る。
座って……ただ時計を眺める。いつも通り8時半集合でHRがあるわけだが、試験は9時。まだ暫く、この空気は続く……というか夕方までコレだろう。
【鞠】
「(参考書、何か持ってくればよかった)」
ここで全然関係無い本とか出したら余計な視線を貰うやもなので、ボーッとするしかない。あれ、それはそれで結局同じ結果になるのか。
……ホント、迷惑な空気だ。
Time
8:30
【秭按】
「――このクラスは……全員、揃っているわね。安堵の想いです。よろしい、まず健康であることが、大事ですから。おはようございます、本日は実力試験日、各々全力を尽くすように」
……担任まで、何かいつもよりコールドな気がする。というか服装がしっかりしている。元からスーツを着こなしている人だが、今日は……多分、素材からして勝負服的な感じだろう。
名物とは聞いていたけど、そこまで皆、気合いを入れるものなのだろうか。進学に意欲のある人達が集まっているようには思えないのに……
いや、そんな違和感は無意味だ。所詮敵の事情なのだから。私には、関係無い。
まず手近で私がやれる、敵への反撃、或いは迎撃。それを今日、試す。
今だって、冷めやらない、確かな感情。
絶対に――赦してたまるものか。